過去ぱち(・ω・`)
□拍手連載まとめ
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蔵の外で子供の声がする。
倉間家で現在唯一『俺ら』が見えるだろう子供。
「おかーさん!まってーっ」
きゃっきゃっと楽しそうに広い庭を駆け回る。
名前は何だったか…。
「典人ー!走ると転ぶわよ」
そういえばそんな名前だった。
母親の声と同時くらいに短い典人の悲鳴があがる。
あいつ、転んだな。
「ぅ、わぁぁぁぁん!おかしゃーんっ」
「はいはい、痛いの痛いの飛んでけー」
ぐずぐずと泣き喚く典人に慣れた様子で接する母親。
おまじないをかければ、典人は涙を拭ってまた元気に走り出す。
「……。」
俺は言い様のない感情に苦笑し、ごろんと箱の上に横になった。
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「…おかーさん?」
目覚めは最悪だった。いや、最高だったかもしれない。
蔵の中に典人が迷い込んだらしい。この蔵は結構大きく、仕舞ってある物も多い。
蔵の中で迷子かよ…。
どうやら俺はまだ典人に見つかってないらしい。見つかっても怖がられるしちょうどいいんだけどな。
「…ぐすっ、ぐすっおかーさん?…どこー…?」
泣き出したかと思ったら号泣。手下も俺も困惑する。とりあえず、行ってやるかな…。
「…よ。」
「ぅ…?だれ…?」
「南沢さん」
「みな…?」
隠された瞳には確かに『力』が宿っている。無垢な瞳と無警戒な典人に俺は背筋がゾクゾクした。
「どーしたんだ?お前」
「おかーさんと、はぐれた?」
「俺に聞くな」
推定15歳の少年に化けた俺は苦笑を漏らす。するとまた典人は泣き出した。
どうしたら良いんだよ!
「仕方ないな」
「ぅ?」
俺は典人の前で手を握る。そしてそれをぱっと開けば手中にはあめ玉。
「あめだ!」
「これやるから泣き止めよ」
「うん!ありがと、おにーちゃん!」
ニコニコ笑う典人は天使だった。あの意地悪そうな倉間の笑顔とは比べものにならない。
それから俺と典人は小一時間、色々な話をした。そしてやっとのこと蔵の重たい扉が開いた。
「典人!」
「あっ!おかーさん!」
「何やってたのよ心配させて!」
「あのね、おにーちゃんが…あれ?」
「ここには誰もいないわよ。さあ、帰りましょう」
典人は蔵が見えなくなるまで振り返り振り返り俺の姿を探していた。
ごめんな、隠れたりして。
でも『俺ら』はこういうもんなんだ。
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ショタ倉間とショタコン南沢さんみたいになってしまった。
反省しています。
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