過去ぱち(・ω・`)

□拍手連載まとめ
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タイトル(仮)
『まっすぐ、進んで』




******


あの日、倉間は俺に言った。
どうやらアンタは妖怪らしいな。
なあ、それなら何故俺に寄ってくる。
そうだな、この仕事に片が付いたら教えてくれないか?



そう言って隣の隣のそのまたとなりの街に行ってしまった倉間を俺は蔵の中で待ち続けた。



三日で飽きるとおもいきや、なんと律儀に今日で三六五〇日。

あいつ十年、帰ってこなかった。
もしかして死んだんじゃないかと心配になって手下を走らせた。
そしたら、生きてはいるそうだ。

ただどうやら『俺ら』が見えなくなったらしい。
だから帰ってこなかった。
人間様はまあ、普通は『俺たち』が見えない。
これで良かったんじゃないか。
だってほら、アイツは人間様と『こっち』に片足ずつ突っ込んで宙ぶらりんの半端者だった。
ならいっそのこと、あっちに戻ればいい。

俺との約束なんて、捨てちまえ。
人間様、人間様、どうかお幸せに。

ああ、俺はまだ名も教えてなかったな。またいつか、お前に巡り会えたなら約束を果たそう。ついでに名も特別教えてやろう。


倉間、倉間、どうかお幸せになりやがれ。
人間様の世界とやらで。
俺はしばらくこの蔵に厄介にならせてもらう。文句は聞かんぞ、約束のためだ。
さあ、何年眠ろうか。永眠なんてさせないでくれよ。

早く俺に会いに来い、日本一腕の立った祓い屋倉間の跡取り、そんな人間。




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