短くどうにか
□自分のために
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今日、南沢さんの家にお呼ばれになった。連れてきたのは南沢さん、アンタだ。
なのに当の本人は数学のテキストとにらめっこ。
俺は南沢さんの部屋を物色しつつも、もう慣れ親しんだこの部屋はどこに何があるかなんて分かりきっていて俺は2、3冊の漫画を手にベットの上に落ち着いた。
「南沢さーん?」
相変わらず返事はない。部屋には文字を書く音と紙をめくる音だけ。
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「うりゃ」
構ってくれないお返しに冷たくなっていた指先でうなじ辺りを掴む。
「うわっ冷たっ」
これには流石の南沢さんも声を上げ俺の方を見た。いや、むしろ睨まれた。
「…何すんだ」
「いや、だって」
「ったく。」
早々にあしらわれ、また視線はテキストへ。
そんなにテキストが、数学が、内申がいいんですか。
「どうしてそんなに勉強とか内申が大事なんスか…」
思わず口に出てしまった。
俺の言葉に反応するようにピクリと体を一瞬揺らし動きを止めた南沢さんは、まるでそこに書いてある内容でも読むように、テキストから視線を外さずに話し出した。