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□その手を――
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昼休み
魔王城から少し離れた森の中で1人佇む人影があった
赤い髪を風に揺らす、彼の名は紅
魔王の側近を勤める青年だ
普段は短気で怒りっぽく問題児と称される彼だが、根はやさしく意外と穏やかな一面を持っていたりする
現に、今も風に当たって休憩をしている最中
青々と広がる空を見上げると、人間の大陸で自分が体験したことなどを思い出す
少々思いに浸っていた紅だが、急に背後を振り返った
人の気配を感じたからだ
魔物かもしれない
そう思った彼は刀の柄に左手をかける
だが、背後にいたのは思いもよらない人物だった
「っ!!? 紅!!」
「お前・・・!!」
プリノ・ハーウェル
現在、魔王という地位に君臨する少女
その少女が目を大きく見開いて佇んでいた
――――なぜか右手を紅のほうに差し出したまま