キリ番です!
□想い出を、
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「キャプテン、敵艦隊撃破しました」
「・・・報告はヤッタランの筈だが?」
「キャプテンと過ごす時間を増やす為に代わって貰いました」
「余計なことを」
艦長室に座るヤマに先程海賊艦を堕としたハーロックがヤッタランの代わりに報告をしに来た。
ヤッタランはヤッタランで奪った物の分配に力を入れているのだろう、ヤマは付き合いの長くなるヤッタランの行動を予想し大きな溜め息を吐く。
「まあ良い、ご苦労だった。お前の働きは大きくアルカディアに貢献されている。
ヤッタランに報酬を貰って来い。あいつなら直ぐに高価な物をお前に渡す」
今回の敵艦隊撃破はほぼハーロックの力だ。
報酬欲しさにヤマの命令を聞かず自分の力に驕った乗組員のせいで一時押されかけたが、直ぐ様ハーロックが単身で動き勝利をもぎ取った。
勿論、ハーロックは驕った乗組員をその場に置いて・・・
そのこともあるが、古株の・・・特にケイがハーロックを甘やかす傾向にあり「べ、別に私これ欲しくないからあげるわ」と奪った物を渡すことが多々ある。
ツンデレと名高いケイを出会ったその日にデレさせたハーロックの力でもあるが、ケイのハーロック愛は続いているのかもしれない。
ヤマも似た傾向があり、普段冷たい態度をとっているがハーロックの知らない所でハーロックの身を案じたり体調が悪いことなど気が付くとこっそり料理長に特別メニューを作らせている程だ。
「キャプテン」
「・・・何だ」
「渡したい物があるんです」
ハーロックは一言断りヤマの前まで近寄る。
普段だと断りもせず近寄って来るからかヤマは不思議そうにハーロックを見ればゴソゴソとポケットから箱を取り出し開けて見せた。
「さっきの略奪品の中から見つけたんです」
「!」
「花のブローチ。
キャプテン、花が好きでしょ?」
箱の中から取り出されたのは花の形を模したガラスのブローチだ。
今では珍しいガラス細工のそれは価値がある物で、値段にすればマニアの間では一年は遊んで暮らせる程の額が付く物である。
「・・・綺麗だな」
「ああ」
「だが、これはお前が持っていろ。
お前の報酬だ」
「だからキャプテン、あなたに渡すんです」
「おい!」
ハーロックはヤマの上へ覆い被さるようにしながらマントの襟へとブローチを付ける。
「ヤマ、顔が真っ赤だ」
「っ!キャプテンだ、早くどけっ」
ヤマは上に乗って来たハーロックをどかし、赤みの残る顔で睨みつける。
「やっぱり似合う・・・」
「綺麗だが、俺には勿体無い」
「キャプテンってそう言うところ、謙虚だな」
「?」
「俺がキャプテンに贈りたいだけ、深く考えず貰える物は貰っておけば良い。
それに・・・」
ハーロックはヤマから視線を外すと、しどろもどろと言ったように不思議そうに見て来るヤマへと答えた。
「キャプテンが喜ぶ顔が見たかっただけで、その・・・今回は何も考えて無くて」
言い終える頃には頬を赤く染め、片手で顔を隠してしまったハーロック。
その姿は普段の大人びた青年の姿とは違う年相応のもので、ヤマは自然と口角が上がる。
「・・・そう言うことなら、遠慮無くこのブローチは貰う」
「はいっ」
「ただし」
座っていたヤマはなにかを机から取り出すと、自分より少し高い身長のハーロックの首元へシンプルなデザインをしたネックレスを付けた。
「キャプテン、これ・・・」
「お前の昇格祝いだ。
今回のこともそうだが、お前の頑張りを皆が認めた」
「でも、俺」
「一月も経たない内の昇格で驚いただろうが、拒否は認めない。
・・・似合ってる」
最後にポツリと言ったヤマの言葉は素の、キャプテンとしての言葉ではなく自然と出たヤマの言葉でハーロックは貰ったネックレスを優しく撫でる。
その様子がヤマにとっては懐かしく感じるものがあり、徐に・・・ヤマは無意識の内にハーロックの頬へ手を置きジッと目を見る。
「キャ、キャプテン・・・?」
「・・・」
ハーロックの狼狽えながらも、同じようにヤマの頬へ手を置くと顔を近付ける。
いつもならばヤマは直ぐ様ロングサーベルを取り出しハーロックの首へと向けるがその様子もなく、ハーロックは心の中でガッツポーズをした。
お互いの唇がくっつくかくっつかないかの距離。
ハーロックのもう片方の腕はヤマの腰をそっと支える。
「ヤマ」
「・・・ハーロック」
ヤマが自分の名前を呼んだことに嬉しさから勢いよく唇を重ねようとするハーロック、だが・・・
――ドンドンドンッ!!!
「キャプテン!!さっきの残党が追って来て・・・?」
「・・・」
慌てた様子で扉を開け、艦長室に現れたのは略奪品の分配をしていたヤッタラン。
その扉を開けた先には部屋の隅まで飛ばされたハーロックと、飛ばしたであろうヤマがお互い顔を片手で隠しながらヤッタランの方へと向く。
その様子になにかを察したヤッタランはサングラス越しにハーロックへと同情の目を向け、ヤマの方へ複雑な表情をする。
「またハーロックの奴、やらかしたんスか?」
「ま、まあな。
ヤッタラン、こいつを連れてそのまま残党を追い払え」
「アイアイ!
行くぞハーロック?」
「・・・」
恨むようにヤッタランの顔を見ながら立ち上がるハーロック。
苦笑したヤッタランはそのまま他のクルーたちの元へと向かい残ったヤマは大きな溜め息を吐く。
「キャプテン」
「っ・・・!?」
「ここは、また次に奪うからな」
いつの間にか気配を消して近付いて来たハーロックはそのままヤマの頬へと唇を付け、ニヤリと笑いながら自分の唇を指しながら扉から出て行った。
「あ、あのバカっ。
〜〜〜ああクソ!自分が一番バカだけどッ」
誰も居なくなった部屋、ヤマはその場で踞る。
その胸元には光に反射した花のブローチが、まるで存在を主張するようキラリと光った。
―想い出を、―
(増やす度、貴方が浮かんで消えないんだ)
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おまけとも言えないおまけです!
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