キリ番です!
□機械の=心-2
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※トチローさんが生きていた場合。
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「トチローさん!
この花、どんな環境で育つんだ?」
「ああパンジーにビオラか!これはね、寒い時期にも日当たりや風通しの良い場所で育ってーー」
アルカディアの一室、トチローとヤマは二人楽しそうに会話をしていた。
図鑑を広げ好奇心一杯の瞳で椅子に座るトチローへ質問するヤマ。
度々ヤマはトチローに教えてもらう為、身を乗り出しては尋ねるのだ。
TPOはきちんと守り、忙しい時や疲れている時は静かにコーヒーを淹れて来たりマッサージをしてあげたりと・・・
AIであるヤマの自律神経はぐんぐん伸びて来ている。
「分かったかい?」
「うん。かわいいな・・・」
「はは!いつか俺たちで地球を花いっぱいにしような〜」
「そうだね!
その為にはもっともっと頑張らないと」
「頑張り屋さんだなヤマは・・・」
「ちょ、トチローさん頭撫でるの止めろよーっ」
トチローは嬉しそうにヤマの頭を撫でて褒める。
ヤマは嬉しいようだが素直にならず、弱くトチローの腕をどけようと行動はするものの本気で嫌がってはいない。
そのことを知っているトチローは遠慮無く、優しくヤマを撫でるのだ。
「・・・」
そんな二人を実は横で見ている人物が居る。
それは、この艇のキャプテンであるハーロック。
トチローと今後について話し合いをし終え一服していた所にヤマが現れ、そのまま腰をかけていたのだが些か機嫌が悪い・・・
自身の飲んでいたコーヒーを啜りながら一見優雅に見えるものの、トチローを恨めしそうに見る。
「あ、キャプテン。
お疲れさまです!」
「・・・ああ」
ハーロックの視線に勘違いをしたヤマはトチローにじゃれ合いながら挨拶をする。
短く返事をしたハーロックは飲んでいたコーヒーを机に置き、ふとヤマに質問をした。
「ヤマ、お前はトチローが好きなのか?」
「そ、そりゃぁ・・・好きですよ」
突然の質問に戸惑いながらも照れながら横に居るトチローを見ながら言い、ヤマは頬を桜色に染める。
トチローもそのことが嬉しく頬をかきながら二人の間にはなんとも言えない空気が流れるが
ハーロックはバッサリとその空気を切るように次の質問をした。
「なら俺は」
「へ?」
「俺のことは、どうなんだ?」
ハーロックは徐に立ち上がり、ヤマの顔に触れる。
トチローはそんな親友にやれやれと肩を落とし、席を外しながらヤマがなんと言うのか耳を傾けた。
「ど、どうって・・・その、」
「ああ」
「嫌いじゃ、無いです」
「好きでも無いのか」
「え!?そ、それは・・・」
「なら、トチローじゃなく俺に構え」
「ぴゃぁあ!!?」
突然抱きしめてきたハーロックにヤマは驚きで固まる。
まさかハーロックに抱きしめられるとは思っていなかったようでヤマは茹で蛸のようになりながら出て行こうとするトチローに助けを求めるが、微笑みながら出て行ってしまった。
「は、離して下さいキャプテンーっ!!!」
「お前が敬語を無しで俺の名前を呼んだら離してやる」
「――っハーロック、離して」
「・・・」
「ハーロック?」
離すと言っていたハーロックだが、ヤマの肩に顔を埋め更に強く抱きしめる。
「もう少ししたら離す」
「さっきのは嘘だったのかよ・・・」
「お前が悪い」
「はぁ?!」
ヤマは文句を言いながらハーロックの背に腕を回す。
身長差のあるハーロックだがヤマには細身に見え自分が抱きしめれば簡単に折れると思っていたのだが、ハーロックの身体は服の上からでも分かる程の筋肉質でヤマを驚かした。
(・・・あれ?)
ヤマはハーロックの腕の中で自分の心臓部分から激しく鼓動がするのを感じた。
ハーロックに強く触れられる度に跳ね、目を見ると身体が固まる。
おまけに身体の体温が急激に上がり、ヤマはバグのせいかと焦るがハーロックが嬉しそうにしているのが見え静かに身体を預ける。
「おちつく・・・」
「?何か言ったかヤマ」
「何でも無い」
二人はトチローが戻って来るまで抱きしめ合っていた。
―機械の=心―2
(・・・)
(ちょ、ハーロックそんな睨むなって!)
(別に)
(ヤマが俺の膝で寝てるからって・・・ぎゃぁあーっ)
「今日も平和ね、トリさん?」
「クワァ〜」
AI用カプセルに戻らずトチローの膝で寝てしまったヤマを目撃したハーロックが無言でトチローに冷気を送り続けるやりとりを
優雅にミーメとトリさんが眺めている、そんな平和な一時。
その横には図鑑のパンジーのページが広げられていた・・・
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あとがきと言う名の零彩様への謝罪!
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