世界が輝くとき
□日常の非日常
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思っていたよりも速くノボリが家と呼ぶ洋風の建物に着いた。
・・・なんだろ。駅での立ち振る舞いといいここといい、ノボリってすごい人だったのか?
これは家って呼ばないぞ。城だ。
ノボリは世間一般の家だと主張したが、大きいと思う。
ビルって建物だかよりは低いけど、あたしの世界じゃお偉いさんしか住んでないような所だ。
門をくぐって、鉄柵で囲まれた庭の奥にある玄関の前で立ち止まった。
「さぁここです。どうぞお入り下さいまし。」
ガチャ、と重そうな音がしてドアが開けられると、そこはもう未知の世界だった。家だったのか。嘘じゃなかったんだ。
「あの、フレア様?」
黙っててくれ。聞きたい気持ちは解るけど黙ってて。
あたしだって何も言えない。
入ってすぐに電気をつけられて、ビビってとっさにその場で丸くなるを発動したなんて言えない。
「いかがなさいました!?もしや具合でも悪いのでございますか?」
「ちっがう。いいから構わないで。」
わたわたしてるノボリにそっけなく言った。
何やってんだろ。こんなことでビビって、情けない。
なんて思っていると、ぱさりと音がして肩に何かがふれた。
あれ、コート?
「こんな冷たい所でうずくまりますとお腹が冷えますよ。」
そう言うなりノボリはコートごとあたしを抱え上げ………て…。
「なにすんだ!離せ!自分で歩く!」
いきなりの浮遊感にジタバタ暴れるがノボリがさせまいとガッチリホールドした。
「こらっ、暴れる方がありますか!リビングまでは我慢なさいまし。落ちますよ。」
けれど暴れながらも、内心実は久しぶりな人の温もりが心地好かったりして。
が!なんか悔しいから絶対に言わない!
やい離せ!だのダメです!などの攻防を繰り返しながらリビングまで向かう。
と思ってたら、急にピタリと止まった。
「お?」
「・・・今頃気がつきましたが、あなた裸足だったのですね。」
言われて自分の足を見下ろす。
おぉ。あの雨のせいで見事に泥だらけになっている。
「さすがに泥だらけでは困りますね。行き先を変更します。まずはお風呂です。」
「風呂か!」
お風呂って聞いただけでわくわくした。
今まで川でしか入らなかったからな。