世界が輝くとき
□情けへの反抗
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辺りはすっかり夕方だ。
そのため町が一斉に、人工の明かりに包まれ、人の往来も激しくなる。蛍光灯は自然の光と違っていかにも目に悪そうな光だ。
フレアはなるべくそれを視界に入れないように目を手で覆って、少しの隙間から見えるノボリの後ろ姿についてく。
数分前、警察署って所に立ち寄ったノボリが、あたしを預かる手続きみたいなのをしてた。
だけど、それには生年月日やら出身地も書かなきゃいけないらしくて、ノボリに尋ねられたあたしは困った。
まさか別の世界からだ、なんて言ったところで信じないだろうし、それに自分の歳しか知らない。
両親が年に一度だけ、『生まれてきてくれてありがとう』って言ってくれてたけど、あんな場所で育ったんだ。
時間や日付なんて気にしたことがない。
両親がいる間にきちんと聞いておけばよかったと後悔しても、もう遅い。
あたしが答えないので、ノボリは困ったみたいだけど、やがて一枚の紙を折り畳んで「続きは家で書いてまいります。」って警察の人に伝えて………今にいたる。
道行く人の視線が、ノボリの後ろにいるあたしに向けられてる。
苛立って指の隙間からギロリと睨むと蜘蛛の子を蹴散らすように逃げてった。
あぁだから人間って大嫌いっ、うっとおしい!
「…フレア様、失礼します。」
「ほ?」
急にふわんと肩に何かがあたり、視線と人工の光が遮られた。
何かと思ったら、ノボリが着てるコートの内側にいた。
「おぉ?」
「暑苦しいでしょうが、少々辛抱して下さいまし。」
ノボリもその視線に気づいてたんだろう。
確かにコートの中は暑いけど、嫌なものを遮断してくれたから幾分かマシだった。
コートの内側でぎこちなく動きながら歩いていく。
でも、やっぱりこの人の考えがわからん。
「……なんであたしを預かろうと思ったわけ?」
唐突に出たそれは、質問ではなく疑問だった。
「何故かと聞かれましても……。」
「見ず知らずの人間なんか、あんたには関係ないでしょ。なのに、二人は受け入れた。……どういうつもりだ?」
「……では、わたくしも聞きます。あなたは何か見返りを求めて、線路に落ちたゾロアを助けましたか?」
「そりゃあね。」
あけすけにフレアが返すとノボリがぎょっとした。
「え」
「ゾロアがいなくなったら、その母親が悲しむ。母親が悲しめば、母親は子を奪った人間を憎む。あたしはその負の連鎖が嫌いだ。」
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