世界が輝くとき
□天使のはしご
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………あの少女が飛び出して3時間くらいたっただろうか。
私は目の前で眠っているタブンネから体温計を取り上げる。
アラ、お薬が効いたのか、平熱近くまで戻ってる。
でも、まだまだ油断は出来ません。
そう考えていたら、タブンネがうっすらと目を開けた。
あらっ、お目覚めですね!
顔色がいいのでホッとした、のも束の間。彼女は不安そうな表情で辺りを見回します。
・・・そういえば、待合室にもこの子のトレーナーさんの姿が見えません。どうしたのでしょうか?
すると急に起き上がってベッドから降りようとしたので慌てて止めましたっ。
無理に起き上がっては、またぶり返してしまいます!
私の迫力が通じたのか、タブンネはしょんぼりとうなだれながらも大人しく座りなおしてくれました。
そりゃあトレーナーがいらっしゃらないのですから、不安に思うのも当然しょうが・・・。
取り合えず、また抜け出すかもしれないので今の状態を伝えておきました。
その時、パタパタと足音が聞こえてこの部屋の前でとまるとガチャッとドアが開かれました。ってアラ、主様じゃないですか!
「あら、タブンネ起きましたか。熱を測ってくれます?」
もうバッチリです主様!
言いつつ先程の体温計を差し出すと、受け取った主様も、それを見て安心したのか微笑みをうかべました。
「大丈夫そうね、よかったわ・・・。でもどうしましょう、女の子が来るまでここに寝ていてもらおうかしら。あの子しかあなたの生息地の場所を知りませんし。」
あらま、このタブンネ野生でしたの?
突然、ガタンと音がして振り返るとタブンネが顔を真っ青にさせて主様に駆け寄った。
そしてしきりに誰かの名前を繰り返し言います。
さっき連れて来た女の子の名前でしょうか。
「落ち着いて。あなたが探してる女の子は一度家にもどってから出直すそうです。だから迎えに来てくれるまで、しっかり休んでいて下さい。」
主様が優しく言い聞かせますが、彼女は何度も左右に首を振って尋ねてきました。
あのコはどこ?あのコが心配だ!って・・・。
野生のコがこんなに人に懐くなんて珍しい。
そんなタブンネの意気に押されてか、主様がタブンネの額に手を当てて熱がないことを確認すると、私に向いて言いました。
「これだけ下がっていれば大丈夫でしょうから、待合室のソファーで休んでいてもらいましょう。タブンネ、毛布を持ってきて下さい。」
了解ですー!
棚から毛布を取り出してくると、私は自分そっくりな顔の彼女の背中をぽんぽんと叩いて、行こうと促しました。
するとタブンネは俯いたままでしたが、ちゃんとついて来てくれました。
大丈夫ですよ。あなたのお友達は絶対来てくれます。
なんとも思ってなきゃ、土砂降りの中、傘もささずにあなたを背負って走って来るなんてこと出来ませんよ。
信じてあげてて下さい。と言うと、タブンネの顔に少し笑みが戻りました。
壁に掛けられた時計の針が2時をさした。