恋の片道切符
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星が眩しい夜。
おれはライブ帰りに立ち寄った公園で、一人虚しくベンチに座ってサイコソーダを飲んでいた。
三本買ったうちの一本はもう空になってて、今は二本目のサイコソーダを半分程一気のみしたところだった。
今のこんな姿の自分を見たら…母さんは、きっと怒るだろう。
シャキッとしなさい!が口癖だったからなぁ…。
家を出るときも最後まで母さんだけが反対していたし。
なんて考えてたら余計に気分が落ち込んで、足元に置いてある愛用のベースが入ったケースを、軽く足先で小突いた。
「はぁ…。」
自然と零れたため息に反応したのか、エナメルのベルトについてるボールがカタカタと揺れた。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとな、クチート。」
おれがボールに触れるてそう言うと、揺れはピタリとおさまった。
兄貴からもらったこのクチートは、会ったその日から仲良くなって忙しいおれに代わって家事をしてくれる。
おれには勿体ないくらい、本当にクチートは良い子だ。
しばらくボーッと過ごしていると、遠い公園の入口に小さな人影が現れた。
誰だ?とか思ってたら、その影が段々大きくなってきて、おれに気づいてないのか同じベンチの端に座ってきた。
何だコイツ、なんでおれに気づかないんだと不思議に思ったが、その人が目を手で隠してるのを見て納得した。
(…泣いてたのか。まいった。)
完全におれは気詰まりしてしまい、すぐにここを離れたくなったが相手は忍び泣いててちっとも立ち去る気配はない。かと言って自分から去るのは後味が悪い。
(弱ったな、どうしたものか…。)