恋の片道切符

□2.
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 朝、寝苦しさに負けて目を覚ますと、目の前にトゲキッスの頭があった。
けどそれが一瞬何か解らなくて、目を何度も瞬かせてから、ようやく気がついた。




「……あぁ、昨日ボールに入れずにそのまんまだっけ。どーりで息苦しい訳だ。
オイ、悪いけど起きろ。トゲキッス、頼むから降りてくれ。」




何度か頭を軽く叩くと、寝ぼけているのかは解らないが、ふよふよとベッドから降りてくれた。

けれど、エイマが「あっ、待て!」と静止をかけたとたん、ゴン!っと鈍い音がしてトゲキッスがドアにぶつかって床に落ちた。




「あぁっ、大丈夫か?!」




慌ててトゲキッスに駆け寄れば、痛みのせいで涙目で俯いていた。
エイマはぶつかって赤くなった額を優しく撫でる。




「昨日、いや今日か。帰りが遅くなったから疲れてんだな。無理に起こして悪かった。」

「キューっ。」




トゲキッスが大丈夫だと言うように首を横に振る。
すると、ドア越しに部屋の外から控えめな声がした。




「兄貴?今すごい音がしたけど……。」

「聞こえちまったか。気にすんな。」

「……なら、いいけどさ。」




それだけ言うと、声の主は階段を降りたのかトントンと足音を遠ざかせて行った。


………あいつも、ほとほと心配性だな。ま、ひねくれてるよりは…いいか。

「………っとマズイ!仕事に遅れる!!」




踵を返したエイマはクローゼットを開け………ようとしたが、トゲキッスが体当たりしてきて出来なくなった。




「痛ぁ!っトゲキッス?」

「キュウン!キュー!」



 
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