pokemon
□星を追って
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そよそよと揺れる風が、髪をなびかせてくれて心地好い。
遠くを見遣れば、足元から扇状にずっと続いた草原の彼方に、高い山がいくつも連なって、尾根にほんのり雪を被っているのがわかった。
日が出てる内に見れたら綺麗だったろうが、今は夕日が微かな光の余韻を残してるだけで、東は濃い藍色の空の中にもう星を浮かべている。
「ずいぶん遠くへ来てしまったね。」
ふと呟きをもらすと、共に遠くを見ていた黒い相棒が尻尾の電気をバチバチと弾けさせた。
赤い瞳は、まるで「まだ飛べる」と言わんばかりに爛々と輝いている。
「いや、今日はもう休もうか。こんなに素晴らしい景色に出会えたんだ。………それに引きかえ、答えは、簡単には現れてくれないな。」
そう言って苦笑いする青年に、黒い相棒が『N』と呼んだ。
『何かが来るぞ。』
「?」
ついっと相棒が顎で何かを示した。つられてそっちを向くと、山の方から何かがこちらに歩いてくるのが丘の上から見えた。
人気のまったくないこの場所なのに、と不思議に思って丘を降りてみると、やって来たそれは青年に気づいて数メートル先で止まった。
「あれ、あたし以外にもこの場所を知ってる人がいるなんてね。」
青年は思わず息を飲んだ。
やってきたのは明かりも持たない、まだ幼い少女だったからである。
しかもあっと言う格好だった。
足は裸足。服はボロボロで、髪を無造作にまとめてポニーテールにしてあるが、それをとめているのは細い蔦だったのだ。
「キミは?」
「あたしは、フレア。おにーさんこそ誰?」
「……N。」
遠慮がちに答えると、フレアと名乗った少女が嬉しそうに笑った。
「N?Nっていうんだね?Nは、あの竜に乗って来たの?」
「……あぁ、ゼクロムのことかい?」
振り返ると、丘の上にいる竜が翼をたたんで天を仰いでいた。
「おっきくて綺麗だね。」
「うん、そうだね。……キミは、どうやってここへ?」
「あたしは、手持ちのコに少し走ってもらったんだ。ほら。」
と言って、少女は服のポケットからひとつのモンスターボールを取り出した。
青年が少し屈んでそれを見ると、オレンジの体に黒い模様が入ったポケモンが、太くてふさふさした尻尾をふわりと振って、「ワフっ!」とないたのがわかった。
「ところで、Nはなんでこんなとこにいんの?」
青年は、この不思議を纏った少女を少し警戒したが、やがて素直に答えた。
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