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□小さな夢
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冬が近づくギアステーションのホームでは、ちょっとした騒ぎがあった。
「知ってる?あの噂…。」
「聞いた聞いた!真夜中にここ、幽霊がでるらしいんだろっ?!」
「しっ!大声で言うなよっ。」
「あっ、ゴメン。…でもただの噂だろ?」
「いや、それがそうじゃないみたい。」
「うそ!」
「本当だって!」
「私も聞いたわ。見回りしてた駅員が、女の子が消えた所を見たらしいのよ。」
「うわ、恐!」
「…クダリ、嫌な噂を聞きませんか?」
いつもの仏頂面を、さらにしかめたノボリが、ホームを見回しながらクダリに言った。
「なになに、噂?」
けどクダリはというと、いつもの笑顔を崩さず双子の兄を見て首を傾げた。
「えぇ。最近になって、どうも流行りだしたみたいです。」
「ふーん、噂ってば恐いよね。でも僕、聞いたことないからわかんない。」
そう言いつつ、クダリはポケットからアメを取り出すと、
カサカサと包みを開いてパクンと口に入れる。
どうやら常備しているみたいだ。
それに気づいたノボリが驚いて目を丸くさせた。
「あ!まったく貴方って人は、勤務中にも関わらずなに食べてるんです!」
「アメに決まってる!」
「威張って言える事じゃありません!」
「甘いの食べなきゃ、僕死んじゃう!」
「そんな事で死んでたまりますか!」
客足が少ないとはいえ、ホーム内でぎゃいぎゃい言い争うサブウェイマスターこそ勤務中に何してる…と通り行く人達の目が言っている。
それに二人が気付いたのは、もう少し後だった。
「…っところでノボリ、噂って何の噂?」
コホンと一つ咳ばらいをして、威厳を整えるクダリ。
するとノボリも、さっきとは打って変わっていつもの雰囲気に戻った。
「お客様から聞いた話では、このギアステーションに幽霊が出る…と。」
「ゆーれい?うわ最悪だね。シャレになんないよ。」
「…そうですね。唯一起こったあの列車事故がありますから…。」
そう言った二人の表情が曇る。