世界が輝くとき
□温かい影
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鋭く低い声で男が叫んだ。
その殺気が含んだ声につい反応してしまい、その場に急停止した。
まずい、目が血走ってる。
「そうだ、そのまま動くなよ。動けばすぐにゾロアの首をしめる。」
「ゲスがっ!」
悔しくて唇を噛みながら睨むと男は怯えるゾロアを抱えて立ち上がった。
どうすればいいっ。
「っ…!」
何も出来ない自分が悔しくて悔しくて、拳をギュッと握って相手と対峙する、とその時。
「デンチュラ、捕まえて!」
まったく別の方向から声が飛び込んできた。
新手かと身を捻れば視界に黒と白のコートを着た同じ顔の二人がホームの向こうから現れた。
こいつらの仲間か?
「うわ!」
「なっ。」
けどゾロアを抱えた男がいきなり倒れるからギョッとして見下ろせば、大きな黄色い蜘蛛…デンチュラとか言うポケモンが
男をいとでぐるぐる巻きにしていた。
あたしかと焦ったぞ…。
「僕クダリ、サブウェイマスターの一人。地下鉄の平和、守るの仕事!」
「同じくノボリにございます。これは一体どういう事です?」
「あっボス!いいところに!」
側であまりの騒ぎで固まっていた駅員さんがその二人を迎える。
「うわぁ本当に乱闘!やっぱり画面で見るより迫力ある!」
(同じ顔…双子か?)
「ボス!こいつら見覚えがあると思ったら指名手配犯でしたっ。あと壁側ではゾロアークと犯人のポケモンがまだ暴れています!」
「わかりました。ジャッキー、貴方はクダリとポケモンたちを鎮静化させてくださいまし。くれぐれも線路際に近寄らないように注意を。」
「はい!」
「うん、わかった!」
と、言うと二人はそれぞれの持ち場へ走っていった。
(こいつらここの上官か?)
一方あたしは構えはとかず、今だに警戒したまま周囲を観察している。
すると、黒のコートを着たノボリとか言っていた人がこっちを向いた。
「ところで、お嬢様?」
呼ばれたことがない単語で、ノボリって人が呼びかけたのが自分だって解らず、つい周囲を見渡してしまった。