disobey

□盲目ピアニスト
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『ぱぁりぃ…?』

〈一時間後に汽車が発車します。私の部下が案内するでしょう、任務よろしくお願いします――〉

『ちょっ、と待てって…』



ツー、ツー、ツー



現在地 ポーランド首都、ワルシャワ

次任務地 フランス首都、パリ



『問題。現在地から任務地まで所要時間は一体何時間ですか』

「ウー?」



正解は三十時間、以上だよ



『幾ら俺が睡眠とらなくてもいいからってさァ、この仕打ちは鬼だよ。鬼』

「ウ?…ウー、」

『列車ね列車。はいはい』



教団を離れる(常に逃亡中)夜刈だが今回、任務はいつも以上に予定ビッシリな長期に及んでいる。


その為かこの数ヶ月間で異様なまでに…



『髪、伸びたな』



元々乱雑だった髪の毛は伸びていった重力に伴い外にハネながらも腰の位置まで毛先が達している。



『……ッ!…う』



最近前にも増して偏頭痛が頻繁に起こるようにもなった。


最近の仕事は毎日のように同じことを朝から晩まで繰り返しているような気がする。


化けの皮を着けて

AKUMAを壊して

他人事のように欺いて

人間を殺して



『やってることと言ってること相変わらずグチャグチャだな』



向かうはFranceのParis

最近は動きすぎていて国境が曖昧になってたりする。



『ウー』

「?」

『駅ってどっちだったっけ?知ってる?』

「…………ウー」



とりあえず駅に向かわなければ長官の部下サマにも会えず…八方塞がりとなる。



『…ウー無線繋いで』

「ウ?」

『………迎えに来て下さいってお願いしよう』



賢明な判断をしたシキにウーは直ぐに首を縦に振り、無線を駅にいる中央庁の人間に繋いでもらった。



(つーか…方舟使っちゃえば道に迷わずに済むんじゃね…っ?)

『ウー!』

「ウッ!ウーウ!」

『え、ダメなの?なんで』

「ウーウ!」

『ちぇ、面倒くせ』





* * * * *





















『…第三使徒計画?』

「はっ 長官より任務資料と並行してエクソシスト様に伝えるようにと言伝が」

『…ふーん』



パラパラと資料をめくるなかで浮かび上がる単語に目を細めるシキ。


「半AKUMA化」
「第二使徒計画」
「被験体」



『なんで俺にわざわざ?』

「? 長官よりエクソシスト様の耳には入れておいて貰わねばならないと」

『エクソシスト、様?』

「…夜刈シキ様へ、と」



中央庁の人間の詰むんだ口にシキは一瞬、微量の殺気を含む瞳で資料と内容を照らし合わせる彼を見た。



『神田ユウには、言ったの…?このこと』

「………、…」

『答えろよ』

「…、わ…我々から、は…伝えて、おりません」

『…そうか』



資料に載っている昔、中央庁で馴染んだ「鴉」の名前が記されていた事にシキは何も言わずに流れる風景に目をやり…口を開いた。



『わざわざ説明ありがとう今日はもう寝るから君も休んでいいよ』

「…し…しかし、ルベリエ長官から詳細を、出来るだけ伝えろ…と」



列車では一等車両で教団用にと用意された個室がシキに宛がわれていた。



『聞こえなかった?』

「……、」

『用がないから出て行ってほしいんだよ』

「……私、は…ッ!!」



シキが瞬時に突き付けたただの挙銃に彼は目を見開いて後退した。


…シキの瞳は言葉とは裏腹に、笑っていなかった。



『失せろ』



半ば逃げ出すように出て行った男にシキは溜め息を着いて挙銃をベッドに放り投げた



『――アルマ…』



懐かしむように、首裏をなぞりながら適当に伸ばされた髪を片側に持って行けば…


現れたのは


「No.0」という黒く彫られた英数字が印されていた。





 

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