□その差およそ30センチ
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それはいきなりの事――




『長太郎ってさぁ、でかいよね』

「え、いきなりどうしたの?」


本当にいきなりだ。

彼女、苗字名前は
俺と同じく2年生で、
この氷帝学園のテニス部のマネージャーをしてくれている。
そして俺がひそかに思いを寄せている子でもある。

そんな彼女からのいきなりの質問。
状況が飲み込めず
俺はハテナを頭上に浮かべていると、
彼女はもう一度質問をした



『まぁ細かい事は気にしないでよ。で、今何センチあるの?』

「んー……、春に測った時は180だったけど、また伸びたからなぁ…」

『………て事は今確実180以上あるよね…。』

「まぁそうなるけど」

『へっへぇー』

「それで…名前はどうなの?」

『…………160センチ。』


今の間は何だろう。
いつもならそうなんだって言ってる所なんだけどこんな風に答られたら


……いじめたくなっちゃう。



「嘘でしょ。んー見た感じ154か5あたりかな?」


なんて言いながら名前の頭を軽くぽんっとたたく。



『うっ………』

「どう?当たり?」


背中を曲げ名前の目線にあわせ
少し意地悪に笑う。


『155だもんっ!!四捨五入したら160あるもん!!』

「5センチって…結構無理あるよ…」

『っ……うっうるさいっ!!』




眉間に皺をよせ両目に涙を溜めて
俺を叩く名前。
全然痛くないし恐くない。
なによりそんな顔すると
また虐めたくなってしまう。


「まぁ名前は牛乳、嫌いだもんね。」

『なっなんで知ってるの?』

「フフッ、何となく見た目で、ね」

『うっ…牛乳飲まなくたって絶対おっきくなるもん!』


というか名前、
さっきから身長についてやけにこだわるな…なんかあったのかな?


「それにしても……なんでそんなに身長の事気にしてるの?」

『……だって前、忍足先輩に言われたんだもん』

「忍足先輩が?…なんて?」

『「自分たち後ろから見とるとお兄ちゃんと妹みたいやなぁ」ってさ』

「それが?」


そんなの結構前から言われてた事なのに
なぜか気にする名前。
解らない…なんでなのだろう。
じっと名前の方を見ていたら
ゆっくりと口を動かした。


『私は長太郎とお兄ちゃんと妹で見られるより、恋人として見られたいのっ!』

「………へ?」

『…あっ』


なんて可愛いんだろう。
急に気にしだした理由はこれだったのか…そう思うと一気に口元が緩みだす。


「ねぇ名前。今の言葉、俺なりに解釈しちゃってもいいのかな?」

『……うん』


俺は嬉しくて
いてもたってもいられず
名前を抱きしめた。
身長差なんて気にならない位に
きつくきつく。


そして、


「大好き」





耳元で囁き、抱きしめた。





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