□甘いめまい
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「苗字、来月の委員会の資料を頼む」
『はい』

氷帝学園中等部、跡部景吾のいる生徒会室に呼び出された私はドサッと音がつくくらいのが量のプリントを渡された。
これを読んで整理して欲しいらしい

『じゃあ終わり次第持ってきますね』

「あぁ、たのんだ」


失礼します…と生徒会屋から出ようとすると、あの跡部景吾が息を吐きながら椅子の背もたれに身体を預けていた。
その顔には疲れの色が見えたからなんだか心配で声をかける。

『会長?お疲れなのですか?』
「あーん?…まぁ、すこし…な。」
『…あまり…無理しないで下さいね?』
「ククッ…ありがとな」


と苦笑いをする。

氷帝学園の生徒会長、跡部景吾の忙しさは、私の想像をはるかに越える忙しさだ。
休めば良いのにって前に言った事があったがその時、俺様が休んだら誰がやる。
なんて言われてしまったから私は言え無かった

だから私は出かかった言葉を飲み込み、制服のポケットに入れていた物を会長の前に置いた。

『これ、よかったらどうぞ』
「あーん…チョコレート、か?」

私が渡したチョコレートを会長は手の平でコロンと転がした。

『えと…ほら!、疲れた時には甘いものが良いって言いますし』

必死に言う私の顔を見つめていた会長は、ふっと優しく微笑むとチョコレートをひとつ口に入れた。

「ん…いつもより甘いな…」
『それくらい疲れてるって事ですよ』

私がクスッと笑うと、会長も笑みを浮かべる。



「ありがとな苗字……でもまだ足りねぇな…」

『え?すみませんもう持ってないんですよ』

「いや、チョコはもういい。それよりもっと甘いやつ…欲しいんだ…」


チョコよりも甘いもの……角砂糖?
そんなの渡したら怒られるなぁ…

そんな考えに思考を巡らせていた瞬間だった


『────へっ!?』

後ろから伸びてきた長くしっかりした腕と背中に感じる重み。
心地よい温もりと品のある香りに包まれて、鼓動がどんどん速くなっていく。

『かっ会長!?…なっなな何して…っ!?』
「あーん決まってんだろ糖分補給だ。」
『えっ…っつ!?』

腕がお腹位の位置に回され、首筋に息がかかるのを感じつつ増してゆく密着度。
そんな状況に、私は意識を繋ぎとめておくだけで精一杯だった。

『っ…私は…チョコより甘くないです…よ…?』

私はなにがなんだか解らず混乱してるというのに会長はクスクスと楽しそうに笑うと、私の首筋をペロリと舐めた。

『〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!??』
「お前はチョコなんかより、もっと…ずっと甘いぜ」


耳元で低く、甘く囁かれたその声に、
私はくらくらして意識を手放しそうになった。



それはもう…

甘いめまいのような感覚。








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