わんだふるでいず

□声
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「おーい。はよおきや?」
『…謙也っ!?』

聞き慣れていた関西弁に反応してガバッと起きて大好きな人の腕を掴んだ……はずだった

「おはようさん。でも俺は謙也やないで?」
『侑…士くん……。(あれ……さっきのは夢、だった…の)』

そう今掴んだのは謙也の従兄弟の忍足侑士くん。私の転校した氷帝学園の生徒で同い年、それでいて同じクラスで隣の席。
謙也からお互いに話を聞いていた事もあって侑士くんとは直ぐに仲良くなった。

「謙也やなくてすまんな。」
『ゆっ侑士くん、ごめんねっ!』

彼は拗ねたように言うものだから悪いと思って慌てて謝ってたら「冗談や」なんて言って喉を鳴らして笑った。

『もう……で、部活終にここまできて……何か用事があったんじゃないの?』

「あっせや、外もう真っ暗やから名前ちゃん迎えにきたんやったわ。」

侑士くんの言葉通りに窓から外を見ると空は真っ暗にそまっていて、星が光っていた。

『あぁ本当だ……ていうか迎えなんて別に大丈夫だよ?私寮だからここから歩いて5分位だし、それに敷地内だしさ』

「あほ、たとえ敷地内だったとしても女の子が一人で歩いたらアカン。ましてや名前ちゃん一人とかもっとアカンわ」

と言って私にデコピンをした。
痛かったけどあの時の謙也を思い出して思わず笑みがこぼれた



『ふふっ、ありがとう。じゃあ侑士くんにエスコートして貰おっかなぁ。』
「ククッ、かしこまりましたお嬢さん」

侑士くんの差し出した手に自分の手を軽く重ねて教室を出た。

『うわっ…さむっ!』

季節は秋。12月、私は制服の袖から少し覗くセーターを少し引っ張った

「ほんま…寒すぎるわ」

隣で歩いている侑士君も寒いらしく、
手に息をふきかけていた。

「にしてもなぁ…謙也もようやるわ」
『へ?』
「俺よりも先に彼女作りおって…ほんま悔しいわぁ。俺の方がええ男やっちゅうねん」
『アハハッ侑士君彼女作れば良いのに。カッコイイんだからその気になったら直ぐ作れちゃうでしょ?』

ノリで笑いながら言ったら侑士君はうーんと唸りながら口元に手をあてた

「そうなんやけどなぁ…なかなかええ子がおらんのや」
『うわー否定しないんだ。ていうか侑士君の言ういい子ってどんな子?』
「脚の綺麗な子。ちなみに名前ちゃんの脚めっちゃええで。」
『………………………多分それがだめなんだよ。』
「名前ちゃん……酷いなぁ」


そんなこんなでいろいろ話してるうちに寮についた。
お礼をして侑士君に手をふってから寮の中に入って行った。


************

『ん〜今日も疲れたー』

ベットに寝転び体をのばしていたら枕元に置いてあった携帯が鳴り手を伸ばし携帯をとった。

『誰から…あっ!!』

携帯をあけて確認するとそこに映されていたのは大好きな人の名前だった。

『謙也!!』
「おっ、名前ー元気にやっとるか?」
『元気にしてるよ〜謙也は?』
「俺は元気やで?どやそっちにはもう馴染めたか?」
『うん!皆いい人だよ』
「そか、ほな良かったわ」

謙也の声を聞く凄く安心する。
でも…声だけじゃ足りない…会いたい会いたいよ……。

『会いたいよ……謙也に会いたい。』
「名前?」
『っ!!ごっごめんっ私ばっかりこんなこと言っちゃって』
「俺も」
『へ?』
「俺も会いたい。」

なんて言えば良いのかな…胸がきゅうって締め付けられる感じ…それも苦しいんじゃなくて、嬉しくて。
謙也も私と同じなんだ、自分だけじゃないんだ、って思うだけでなんかホッとする。

「まっまぁあれや!あっ会えなくても俺達は、そのっ……ずっと一緒やからな!」
『ふふっ………ありがと謙也、大好きだよ』
「っ……知ってるわ…アホ。」


多分今頃謙也は顔を真っ赤にしているだろう。でもいわない……多分私も今、謙也に負けない位に真っ赤になってるから。

「ほっ、ほな寒いから暖かい格好して寝るんやでっ!」
『うん。』
「ほな、おやすみ。」
『うん。おやすみ…』


謙也が切ったのを確認して自分も携帯を閉じ窓を開けてほてった体を冷ましてから深い眠りについた。









おまけ

次の日
(ユウジ、お前に頼みが有るんやけど)
(ん?なんや?)
(名前の声真似してくれへん?)
(いやや。)
(一回だけ!一回だけでええから!!)
(1000円)
(お願いします…)
(……部長、謙也さん土下座してますけど…大丈夫っすか?)
(いや、あいつはもう重症や。今のあいつには、あんま関わらんほうがええ。)





*02 End*

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