ONEW

□デビューから1年とちょっと
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今日の仕事が予定より早く終わった。




何の迷いもなく、ララの家に向かう。




理由?

それは、会いたいからに決まってる!





会いたいと思っても、会えないときも多いし、

無性に声が聞きたくても、どうしようもないこともある。




それって、一般人とか芸能人とか、
きっと関係ないよね。





それで時間ができたら、会いたい人に会いに行く。



こんなの世界中みーんなそうだよね。










ララとは、高校生の頃からの付き合いで、





半年くらい前だっけ



いままで当たり前だと思っていたララの存在は
“そのこと自体が特別な存在”だって気づいて、


それでも初めは気づかないふりしてたんだ。





恋愛は契約違反



内緒で付き合うってことも考えてみたけど、

ファンや会社を裏切ることになるし、
メンバーに迷惑をかけることになるからって我慢した。



けどララへの気持ちはやっぱり我慢できなくて…



みんなに嘘をつくのが嫌なのと同じくらい、
自分に嘘をつくのも嫌だったから、

ララに正直に打ち明けた。



正式に恋人って関係にはまだなれないけど、
それでも一番近くにいてほしいって言ったら


ララは『うん』って言ってくれたんだ。



これから先どんなことも頑張ろうって思えたし、
いま何をしていても楽しい気分になれるんだから、

これって仕事にだっていい影響だよね?




いろいろと課題はなくはないけど、それでも
いまの僕は、ララのことを考えただけで笑顔になってしまう。







浮かれた気持ちでペダルを漕いでいたら、

あっという間にララのアパートに着いた。





スピードを出しすぎて息は切れているのに、

冷たい風にさらされていたほっぺは感覚がなくなってる。





今夜は一段と冷えるってキボムが言ってたっけ。






来客用の駐輪場に自転車を停めて、

ララの部屋まで急いで階段を駆け登る。




このアパート、小さいけど可愛くって

ララの雰囲気にぴったりだ。






そんなことをメンバーに言ったら、

「はい、はい…」って流されたんだっけ…。











よし!着いたっと。




そっと鍵を開けて中に入る。




今日来るって言ってなかったからびっくりするんだろうな〜♪





驚かしちゃう?





あ、でも一人暮らしの女の子にそんなことしたら、

怖がらせちゃうか…。








扉を開けると、いつもの甘いやさしい香りがした。






明かりもついてるし、映画でも観てるかな。


ララ、明日お休みだもんね。





リビングに続く扉を開けると、

ローテーブルの上にワインボトルとグラスが一つ、

一時停止になった映画とソファーに

ララ…








が、いない。






あれ?





とりあえず、ソファーに腰を下ろし

上着を脱ぎながらキョロキョロしてみる。




こんな中途半端な感じで、寝ちゃう子じゃないし…





カチャ



小さく音のするほうに目をやると、
トイレから出てきたララが立っていた。







『あれー、ジンギーだーー!』




びっくりとか…しないのね。笑







一瞬でわかる。
ララ、ご機嫌だね。笑





「こんばんは!」




『こんばんはぁー♪どうしたの?仕事はぁ?』






「予定より早く終わったから来ちゃった!」



僕、女の子みたい?
可愛いでしょ。笑





『うそぉ。嬉しい♪
なんだ、言ってよぉー。
明日休みだから、本気モードで飲んじゃったじゃん♪』





わかってる。笑



だって、ワインボトルだいぶ軽くなってるもんね。





「ごめん、ごめん。前もってわからなかったからさ…

びっくりさせたくて、終わってすぐこっち来たの。」





近づいてきたララは、

脱ぎ終わったばかりの上着を手に
僕の横を素通りしていく。





『嬉しいからいいよ♪


あ、ジンギも飲む?ワイン?焼酎のがいいかな?


あ、車?』




「今日は自転車。飲んじゃおっかな?」





『こんなに寒いのに!?寒いのにありがとう』



ララはそう言って、

ソファーに座る僕に近づいてぎゅーって抱きついてきた。




絶対酔っ払ってる。笑



可愛いからいいんだけど。笑





「いえ、いえ」


ほころぶ口元を隠して、
僕もララの背中に腕を回しぽんぽんと叩いた。




『あ、飲むんだっけ!


焼酎のがいいよね?待ってて』






甘い雰囲気になると思いきや、


淡々と席を立ってキッチンに向かうララ。






嫌いじゃないよ、そういうところも。笑






会えたことも嬉しいし、

少し酔っ払ってテンションが高いララが可愛くて、

僕の顔緩みっぱなし。



寒いところから、急にあったかい部屋に入ったのも関係あると思うけど。







キッチンからララの声がした。




『ジンギー!お腹はぁ?何かつくるー?』




「大丈夫。いいからこっち来てー」




じゃあ、あるものでいっか…ぶつぶつ…



ひとり、ぶつぶつと冷蔵庫に向かって話し続けるララに

早く隣に来てほしくて、もう一度話しかける。





「映画観てたの?続き一緒に観よっ」




『うーん!


…あ、ねぇ。


やっぱりちょっと食べない?』






「なーに?」




振り返ると、
スリッパの音をパタパタと鳴らして
ララがやってきた。


『はい、お待たせ♪』






テーブルの上に焼酎とグラスを一つ。

チョコといちご…ララの好きなもの。

と…





あ!チキン!!!



『今日ね、つくってみたんだ♪
食べてみて♪

新作〜♪


まだ12時過ぎてないから…

いいでしょ?
一口だけ。ね?』




僕の体のこと、気にしてくれてる証拠。

でも食べてほしいのを
我慢できないって感じの
少しの甘えてくるところ。


可愛い♪



「食べる〜♪」






『どぉ?』






目を丸くして、僕の顔を覗き込んで、可愛い






っていうか、


顔近っ!笑


酔っ払いって、楽しいよね。笑




「おいしい!!ララちゃん、天才!!」





『ホント!!!?嬉しい〜♪



でも天才はうそーー。


料理苦手なの知ってるじゃん。』





「でも少しずつ上手になってるよ?


っていうか、やらなかっただけで、
つくってくれるものはいつもおいしいよ?

ホントに。」





『ホント?じゃあ、



才能を信じて頑張ってみる!』




「うん。笑」




天才っていうの、信じたのね。笑





でも冗談抜きで
ララのつくるものはおいしい。




普段から食べることが好きで、
いろんなお店も知っていて、
味を知っているからか、

ララがつくるものは
どれも本当においしかった。






「映画、観よっ?」





『続きからじゃ、つまらないでしょ?

バライティもあるから、
そっちにしよう!』





「うん」




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