TAEMIN

□僕のチョコあげる
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「ララ見てー!」

今日は2月14日。
バレンタインってやつだ。


陽の光がきらきらとまぶしい朝、女の子たちが愛しそうに抱えていた可愛らしい色とりどりの紙袋は、

日も落ちた頃、今度は男の子が嬉しそうに提げている。


中身はもちろんチョコレート。



「見て!見て!!大収穫!!」


わたしに駆け寄る、キラキラした天使

のような見た目の、全然空気の読めない天然炸裂の幼馴染み

のわたしの片思いの男の子。


名前をテミンという。




見た目完璧、
中身も完璧、
勉強もそこそこできるし、
運動もそれなり、
走り方は少々笑えるけど、
それも愛嬌ってことで万人に受け入れられ、
あまりに空気が読めないところも“天然”なんて言って可愛がられ、
強気なところはかっこいいと言われ、
甘えん坊なところはまんま可愛いと言われ、
大胆なわがままは素直と言われ、
笑顔を見せれば天使の微笑み、
寝顔を見せれば天使のお昼寝、
自分勝手な行動も、天使のイタズラなんて言ってむしろ喜ばれてるように思う。




悔しいけど、みんなの評価でもあり、
わたしの評価でもある。


唯一の欠点は…超がつく鈍感ってことだろうか。



『よかったね!たくさんもらえて…』



「えへへ。
ララ、チョコ好きだよね♪一緒に食べよう〜♪」





『え゙…遠慮しておきます…』




テミンに想いを寄せる女の子の大切な気持ちを…
わたしがいただくわけにいかないっつーの。


そういうところが…はぁ。






「なんで?なんで?これ、可愛いよ?
こっちもいいにおい♪♪
これなんて高そうだし!
こっちのみたいに高級っぽいお店のやつのほうが開けるときドキドキするよね!?
味も間違いないし!!」






手作りチョコをそんな山盛りもらっておいてよく言うよ…
刺されるよ…



うなずいたらわたしが刺されるな…



『気持ちこもってるんだから、そんな言い方…』



そんな風に言われてるって知ったらかなしいよ。


その中にわたしのチョコがなくても、そんな風に思ってるのかと思うとかなしくなる。






「え?嬉しいよ♪
みんなのあったかい気持ちがいーっぱい詰まってるから、
大切な人と大切に食べたいなぁって思っただけなのに」




『そういうのはね!もらった人にありがとうって思いで…



「ありがとうって思ってるよ。
一生懸命僕を想って準備してくれたんだもん。
手作りでも、お店で買ったものでも。
どうしようかな?どんなのが好きかな?喜んでくれるかな?って、
僕のことを考えてくれた時間がここにいーっぱい詰まってるでしょ。
だからすごく嬉しいし、
幸せな気持ちで食べたいなって思ってるんだよ?」




意外なほどまじめな回答で、用意しなかったことに少しだけ後悔した。



どれだけチョコ好きのララでも、正直うんざりするほど、
テミンが山のようにもらいまくることは、わかっているから準備しなかった。


幼い頃から一緒にいれば予想がつくから。




どうせわたしが用意したチョコなんて、
“ララ、チョコ大好きだもんね!自分で食べていいよ?”とか、
悪びれた様子もなく言ってのけるんだ。



そう思っていたから。





『なっ、なら…全部持って帰ってちゃんと1つずつ込められた想い分、味わってあげなきゃ…』





「でも全部の好きには応えられないから。
くれた人、みーんなステキな女の子だけど、応えられないでしょう?


だからね、せめて僕が幸せな気持ちで、このチョコを喜んで味わったら、
みんなに少しでも気持ちを返せるかな?って思ってるの。


だから!ララ一緒に食べよ♪?」



『なんでそうなるの…?』





「ララってさ、鈍感?」




『エ゙!?』

テミンに鈍感とか言われたくない…






「さっきから僕何度も言ってるけど…
ララと一緒に食べたいの。
大切な人と、大切に食べたいの。
わかる?
ララと一緒に食べたら幸せな気持ちになるの。」




『え…?///』






「僕の大好きなララは、チョコが大好きだからね、
一緒に食べたらきっとふたりとも幸せな気持ちになるだろうなぁって思ってるの!
そしたらチョコも、くれた人も嫌な気持ちはしないでしょ。
僕がいい気分なんだから!」




『…わたし?』


大好きって!!今、大好きって言った!!?





「僕は今年も好きな人のチョコは食べられないんだ。どうせ。


でしょう?」


『用意してない…///』



「だから、僕のチョコあげる!


ね?」






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