本
□青き伯爵
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「「メシーア!」」
古ぼけた館に明るい声が響いた。
顔のそっくりな二人の男は、一人の女の元へ向かう。
「どうしたの?ロンお兄様、アルお兄様」
そう言って一人の女が二人の男へ振り返った。
「「いや、呼んでみただけだよ」」
「フフ。変なお兄様達」
決して裕福ではない貴族。
俗に言う貧乏貴族。
年頃の兄妹はそんな産まれだった。
母は女を産んだ時に亡くなり、父は未だ戦へ行ったきり帰って来ていない。
兄二人は軍に入っている。
妹の女は修道院に入る予定だったが、当時の修道院は風紀が乱れていた。
故に、妹大好きな兄二人からすると「妹をせんな危ない場所にはいかせない」という事だ。
しかし兄二人も後一ヶ月程で、軍に戻らなければならない。
心配で仕方ないのだ。
「昨日は嵐だったから、外に散らばっている枝を片付けなくちゃ」
「「手伝うよ」」
女は「ありがとう」と兄二人に微笑んだ。
兄二人は顔を見合せ、走って外に出る。
女はそんな二人の後に着いて歩く。
館の外は、文字通りに荒れていた。
女が育てていた花も昨日の嵐でダメになっていた。
「酷いな」
「確かに酷いな」
兄二人は二手に別れて枝を集めていく。
女も追い付き枝を集めていく。
ドレスが水溜まりに付くが気にしなかった。
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