□赤き少女
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「おばあさん、一つ聞いてもいいかしら」
「うん?何だい」

「私の父のことを教えて欲しいの」

 おばあさんは押し黙った。

「言いたくなかったらいいのよ。無理言ってごめんなさい」
「いや、こっちこそすまないね」

 何かあるんだ。私はそう思いら町の情報屋に聞くことにした。

「教えて。私の父のことを」

 そう言って私はお金を情報屋に渡した。決して高くないけど私なりに一生懸命貯めたお金だ。

「しかし、君のお母さんに口止めされているんだよ」「そんなの関係ないわ。
これは私個人のことよ」

 しばらくの沈黙が店を包んだ。
 そして重い空気の中、情報屋は口を開けた。

「……狼だよ」

「え?」

 何のことだか解らない。
 何が狼?

「君の父親は狼だ」
「え?まっ、待って。狼?父が?」
「驚くのも無理はない。私も初めて聞いたときは驚いた」

 私は店を出た。
 頭の中は真っ白。
 フラフラした歩調で私は家に帰った。

「ただいま」

 家の扉を開けたらシンとしていた。
 きっと母は仕事なのだろう。

 私は鏡の前で赤い頭巾をとった。
 私の耳。
 私の耳は他の人とは違う。
 皆耳の上部はまろやかな流線型を描いている筈なのに、私の耳は大きくて上部がピンと尖っている。
 そんな耳が恥ずかしくて赤い頭巾を被るようになったのだ。

「これじやまるで狼じゃない」

 何気なくそう呟いて私ははっとした。

「お、お、か、み……?」 

 私が狼の娘。
 情報屋が言っていた私の父。
 だから母もおばあさんも言いわなかったのだろう。

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