未来へ走る船 第一部

□第四章 オレンジの町(2011.11.16)
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第四章 オレンジの町



海は今日も青く穏やかだ。

小舟の船首から聞こえる声は 「腹減ったー」 のルフィの声。


「だいたいお前ら航海術を持ってねェってのは、おかしいんじゃねェか? ミコトは “グランドライン” から来たんだろ」


ゾロはマストに背中を預け座っている。


「おかしくねェよ。 海軍基地はコビーが連れて行ってくれたしな」


『私のは、その……裏ワザみたいなもんだから』


ミコトは二人の間にちょこんと足を抱えて座っている。


「はァ……? どうやってだよ。 ルフィは知ってんのか」


「知らねェ。 どうやって来たんだ?」


ルフィは興味深々でミコトに聞いてきた。

ゾロも早く話せと促す視線を向ける。


『う……』


二人に挟まれたミコトは視線を逸らせないで、言葉を詰まらせた。

ミコトは嘘をつけない。

だから、 今まで “秘密” としか言えないし黙っているしかないが今回は通用しないようだ。

仕方ないと諦めて話す。


『う〜んと。 私は足から水を噴射させて、海をボードに乗って走るんだよ。 だから、風も波も関係ないから……』


「なるほどな。 航海術はいらねェか」


ゾロは納得したのか頷き、ルフィは目を輝かせていた。


「すげー! 見たい! 今できねーのか?」


『今はボードもないし、代わりになるような物もないから出来ないよ。 ごめんねルフィ』


「そっか……それじゃあしょうがねェか」


残念そうにしているが、ルフィはすぐに気持ちを切り替えてゾロに話を振った。


「ゾロこそ、海をさすらう賞金稼ぎじゃねェのかよ」


「おれは、そもそも賞金稼ぎだと名乗った覚えはねェ。 ある男を探しに、とりあえず海へ出たら自分の村へも帰れなくなっちまったんだ。

仕方ねェから、その辺の海賊船を狙って生活費を稼いでた……それだけだ」


「何だお前、迷子か」


『ぷっ……!』 


瞬間、ミコトは吹き出した。


「その言い方はよせ! それにミコト、笑うな!」


怒るゾロにミコトは 『……ごめんね』 とすぐに謝った。


「まったく航海もできねェなんて、海賊が聞いて呆れるぜ! これじゃ、 “グランドライン” も目指しようがねェ。 早ェとこ “航海士” を仲間に入れるべきだな」


ゾロが “航海士” の話をするとルフィは楽しそうに指を折り始めた。


「あと “コック” とさ “音楽家” とさァ…」


「んなモンあとでいいんだよ!」


ゾロのツッコミにルフィは 「何だよ……海賊は歌うんだぞ!」 とふて腐れた。


ミコトはぶつぶつ言うルフィに苦笑し、心の中で呟いた。


(早くナミが仲間にならないかな。 これじゃ、航海じゃなくて漂流だよ……)


ルフィとゾロはミコトの考えなど知るわけもない。

二人は狭い小舟の中で突然ひっくり返り揃って叫ぶ。


――腹減った!! 


仰向けになるルフィが空を見上げると、大きい鳥が気持ちよさそうに飛んでいた。


「食おう! あの鳥っ」 


がばっ! と起き上がるルフィに対して、ゾロは片眉をあげて 「どうやって…」 と尋ねた。


「おれが捕まえてくる! まかせろ! ゴム……」


マストに手を伸ばそうとするルフィに向かってミコトが叫んだ。


『あ! 待ってルフィ!』


同時にルフィの体をドンと両手を突っ張り体当たりした。

ルフィは押され、船尾にゴロンと転がった。


「ったた。 何すんだミコト!」


頭をさすりながら、起き上がるルフィが空を見上げれば、鳥は遠くに飛んで去っていった。
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