未来へ走る船 第三部

□ジャヤ〜その2(2014.2.25)
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帆は気持ちの良い風を受けて指針を目指す。

たこ焼きも食べ終わり満腹になったウソップは見張り台から双眼鏡で水平線を見ていた。


「まだか? ウソップ」


下から尋ねるゾロにウソップは首を振って双眼鏡から目を外す。


「ああ、まだ見えねェな」


「そんなに遠くはねェんだろ? あのサル男がさっきの地点をナワバリって言ってたくらいだ」


――ええ。 と頷くナミはオレンジの髪を暖かい風に乗せていた。


「気候もさっきからずっと安定してるから、おそらく……もう、ジャヤの気候海域にはいるのよ」


ルフィはメリー号の船首の上で寝ころんでいた。


「ジャヤはきっと春島だな」


「ぽかぽかして気持ちいい」


手摺りに座るチョッパーは空を見上げた。

カモメが多い。 島が近い証拠だ。


「春はいい気候だな。 カモメも気持ち良さそうだ」


ドラム島は冬島で春は極端に遅く短い。

心地よい風に鼻をひくつかせ味わおうと息を吸い込んだ直後、3羽のカモメが空から落ちた。

すぐに駆けつけるチョッパーはポロリ……と甲板に転がる血で濡れる銃弾を目にして叫ぶ。


「っあああああ! 撃たれた〜!」


即死を免れた1羽が体を震わせた。

抱き上げるもののすぐに事切れてしまっていてはどうしようもない。

ルフィがチョッパーの後ろから、カモメの足を掴むとキッチンの扉に向かって叫ぶ。


「お! 焼き鳥にしようぜ! サンジ〜! カモメ、カモメ」


張り切って持っていくルフィの頭上からウソップがチョッパーに尋ねた。


「撃たれたって……銃声なんて聞こえねェぞ」


「ほら銃弾! 飛んでた角度から見ても船の正面からだ!」


チョッパーはピンセットで銃弾を拾って見せた。



「まだ見えてもいない島から狙撃を? チョッパー、それは無理よ」


ナミが手をかざして、海を眺めるが島影すらない。


「だっておれ、ずっと見てたんだ」


言い張るチョッパーだが常識で考えてそんな事は有り得ないとウソップは見張り台で笑う。


「ハハ……そりゃどんな視力でどんな銃でどんな腕前の狙撃手だよ。 どっかで撃たれて偶然、今落ちたのさ。 な、ミコト」


眉をひそめてジャヤのある方向を見つめていたミコトはウソップに呼ばれてハッ! として仰ぎ見た。


『え……』


「……えっ……て、お前聞いてなかったのかよ?」


『ご、ごめん……何?』


申し訳なさそうな顔で尋ね返すミコトにウソップはしょうがねェなぁ……と肩を上げた。


「見えない島から狙撃出来る奴なんていねェよな……って話だ」


『…………』


つい黙り込んでしまうミコトとウソップの話を聞いていたナミ、チョッパー、ゾロはいるのか!? と見てしまう。




ミコトには誰が撃ったのか分かっていた。

黒ひげティーチの狙撃手である “音越 ヴァン・オーガー” だ。
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