未来へ走る船 第三部

□ロングリングロングランド〜その1(2017.10.15)
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第24話

ロングリングロングランド



次の島を目指す一味。

メリー号の見張り台で双眼鏡を手にするのはロビン。

目を凝らして見える水平線の向こうは、ぼやけてはいるが島影が薄く浮かんでいた。


「あら……島みたいね」


ロビンの呟く声の下では、ナミが周囲の海を見渡す。

少し前に一味は急な大波に襲われ逃げてきたのだ。

落ち着いた波の様子にナミは頷くと、ルフィはほっとしたように息をついた。


「――ふー、おさまったか」


「というより、あの大波はシーモンキーのいたずらよ。

湿度も気温もずいぶん安定してるから、もう次の島の気候海域に入ったんじゃないかしら」


そっかーとナミの分析に、ルフィは頷くとすぐに興味が島に移る。


「おい、ロビン。 なんか見えるか?」


ルフィの見上げるロビンは双眼鏡を片手に淡々とした調子だ。


「島がずっと見えてるわ」


「「言えよ! そういう事は!! 」」


同時においーっ! とツッコミいれるのは、ルフィとウソップ。

ウソップはこれだからロビンはという様子で説く。


「景気の悪ィ奴め! いいか! 島が見えたらこう言うんだ」


「野郎共〜! し〜まが見〜えたぞ〜イ!! やっほーーう!」


「――言ってみろ」


ウソップとルフィのアドバイスをロビンは吹く風とともにスルーする。


「わりと霧が深いわ」


聞こえたナミは、すぐにチョッパーに頼む。


「霧か……危ないわね。 チョッパー、前方確認任せたわ!」


「ヘイ!」


チョッパーは張り切って船首に向かった。

一方、ルフィはロビンに文句を言う。


「お前なァ、おれ達がどれだけ島を楽しみにしてると思ってんだ!?」


「ごめんなさい。 気をつけるわ」


「そうか。 気を付けるならいいや」


あっさりと終わってしまう二人の会話の横で、ウソップは神妙な表情を浮かべた。


「――ところで……さっきの船、気にならねェか?」


疑問はつい数分前の事だ。

いたずら好きのシーモンキーの大波に襲われた時、奇妙な海賊船もその場にいた。

ウソップはもうここにはいない船の様子を思い出しながら、変だったよな? とルフィ、ゾロ、サンジ、ナミに尋ねる。


「船長がいねェとか……航海士がいねェとか……。 

旗はねェわ、帆はねェわ、やる気もねェわで……海賊の一団として成り立ってねェんだ!」


「海戦でもやって負けたんだろ――で船長が死んで、色んなもん奪われて……」


腕を組んで答えるゾロに、ウソップは手を違うんだと上げる。


「いやいや、それがよ……! よく船を見たんだ。 そしたら戦闘の形跡もねェんだよ! 

なのに海賊にとって “命” とも言えるようなもんが、あの船にはなかった!」


疑問を投げ掛けるウソップに、サンジが煙る煙草の灰を落とす。


「――じゃ海賊じゃねェんだろ……気にすんな」


「んー……どうみても海賊だと思うんだがな、あいつら。 ……悪い予感がするぜ……」


不安を隠せず、唸って考えこむウソップの事など、気にしてられないと、ルフィとサンジは船首へと向かう。


「いつもそうだろ」


「さーて、町があるかなー! 造船所あるといいなー!」


「ルフィ、すぐに上陸しちゃダメよ!」


船首ではチョッパーがワクワクして前方の海を見守っていた。


「いい船大工が仲間になってくれるかな」


見えてくる島影にルフィがゾロに叫ぶ。


「海岸が見えた! イカリの準備!」


「オウ」


途端に腹を抱えるウソップの姿は一味の甲板ではいつもの事。


「うわっ……おい、みんな……聞いてくれ」


「チョッパー! ウソップが “島に入っってはいけない病” だ」


「それは治せねェ」


サンジとチョッパーに先に言われたウソップはウッ……と言葉を詰まらせた。
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