番外編

□麦わらの一味の日常〜ナミとサンジの警備24時編
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【たとえばもし、ミコトが1人になった場合】



ナミがメリー号に戻って来たルフィに怒鳴った。


「ミコトはどうしたのよっ! 一緒だったでしょ!?」


「なんか本屋に寄り道するって言ってたから、先に戻って来た」


「何で、1人にすんのよ! バカルフィ!」


「別に1人だって平気だろ」


「平気じゃないわよっ!」


ナミの呼ぶ声が響く。


「サンジ君っ!」


「ハーイ! ナミさん」


すぐにキッチンの扉を開け放ち出て来たのはメロリンサンジ。


「大変! ルフィが、ミコトを置いて帰って来たのよ! 急いで迎えに行くわよっ!」


「承知!」


トウっ! とばかりにサンジは飛び下りるとナミと一緒に町に向かった。

途中、2人は広場に続く道でウソップとゾロにすれ違った。

ミコトの行方を尋ねたら知らないと2人は首を振った。

結局、ゾロとウソップも巻き込んでナミとサンジはミコトを探しに行く。

4人は広場へと向かうと騒がしい声に気が付いた。

まさか!? と思い、急いで向かえば、ミコトが男を地面へと押さえつけていた。

周囲には6人倒れている。

噴水の近くには1人の女性が座り込んでいた。

女性は惚けた表情でミコトを見つめている。

どうやらミコトが助けに入り、華麗に悪漢を倒した姿に魅入ってしまったようだ。

あの様子では、さぞやミコトは美しく舞ったのだろう。

あっという間に終わらせたミコトが微笑を湛え涼やかな声で尋ねる。


『……怪我はない?』


顔を傾けるミコトの白い髪は細くさらさらと流れた。

女性が顔を上げるとミコトは綺麗に弧を描いて優しく微笑む。

シロスマイル降臨だ。


「あ……あ、大丈夫です」


見惚れた女性は頬を染めて、表情を隠すように俯いた。


『そう、良かった……』


ミコトはしなやかな手で女性を立ち上がらせようとして伸ばした。

指先が触れようとした瞬間、ナミの叫ぶ声がした。


「ミコトっ!」


ミコトは声にハッとして、くいっと顎をあげると聞こえた方に顔を向ける。

伸ばした手は自然に引かれ女性から離れた。

ミコトのもとにすぐに駆け寄るのはナミとサンジ。

その場で、待つのはゾロとウソップだ。

不思議そうに見つめるミコト。


『ナミ……それにみんなも。 どうしたの?』


「いいから、帰るわよっ!」


ミコトはナミに手を掴まれ引かれるままに歩く。


「あ! あの! 待って下さい!」


女性の呼び止める声にミコトの足は止まる。

振り返り見ると、にこやかな微笑だけを残してナミと一緒に後にした。

一瞬、微笑に見惚れた女性は同じく去ろうとするサンジの腕を咄嗟に掴んだ。


「待って! あの方は……ミコトさんですよね。 どんな方とか教えて頂けないでしょうか?」


「悪ィけど……おれ達はお尋ね者だから、教えられねェんだよお嬢さん。 おれのなら秘密で教えるけど?」


「あなたのは別にいいです」


「そうか、残念……」


翻すサンジは後ろを振り返るナミと顔を見合わせた。

2人は苦虫を噛んだ表情を一瞬浮かべる。


――女も気をつけないと!


続くゾロとウソップはその様子をもちろん見ていて気付いた。

お前ら、やり過ぎんなよ……――と、思ったのだった。



(更新 2013.3.25)
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