番外編
□麦わらの一味の日常〜ナミとサンジの警備24時編
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【たとえば、酒場……少しダークな感じで】
薄暗い酒場は海賊、賞金稼ぎ、盗賊……と、裏で生きる者達で溢れていた。
一味は食事と何か面白い話がないかと、ふらっと立ち寄ったようだ。
丸い木製のテーブルを囲っているのはサンジをのぞく6人だ。
サンジは食事をさっさと済ませると、情報取集という名のナンパで別のテーブルで美人と話している。
ルフィは食べ足りないのかテーブルに顎をつけて、ナミに文句を言っていた。
チョッパーはというとウソップの嘘話に目を輝かせて聞いている。
ゾロとミコトは今いる島や町の様子について話をしていた。
ルフィの文句を流して聞くナミがミコトを狙う視線に気付いた。
「ミコト……ちょっと手、洗ってくるね」
『ん? うん。 ルフィ達と待ってる』
ガタン……と席を立つナミは歩くと、ミコトがルフィ達と話しに夢中なのを確認する。
わざわざ、サンジの前を通り過ぎて、微笑を湛えて男のもとへ近づいた。
「……私じゃダメかしら?」
男の胸に手を当てて撫でる。
さりげなく財布を盗み、色っぽい目で誘惑し外に連れ出そうとする。
「人がいないところで楽しみましょ?」
これを断れる男はいない。
ナミは店の外の細くて暗い路地に誘導した。
ナンパをしていたサンジは通り過ぎるナミを見て、会話をする女性が気付かないぐらいの薄い笑みを口端に浮かべた。
吸っていた煙草を灰皿で消して女性に微笑むと外へと気配を消して向かった。
路地の濃い影に潜むサンジは煙草を口にして当たり前のようにナミを待つ。
仄かに赤く光る明かりは煙草の火。
ゆっくり吸って煙を燻らせる。
ナミはサンジの待つ路地で連れだした男の背を思いっきり突き飛ばした。
勢いで空気が揺れて煙がふわりと形を変える。
いきなり押された男が思わず地面に手をついた。
驚く指先の前には黒い革靴が見える。
ハッとして顔を上げた男の目には見知らぬ金髪の男。
サンジが転ぶ男を見下ろしていた。
「あとはお願い」
ナミは一言だけ残してその場を去った。
サンジはニィと笑うと男の肩にスッ……と足をのせた。
「……覚悟しろよ」
ナミはというとにこやかに笑いミコトの隣の席に戻ってきた。
「お待たせ!」
『ナミ! 混んでたの?』
「そう、混んでたの」
ナミの手元には見た事のない財布。
『それどうしたの?』
「ちょっと、スッたの。 ん〜、思ってたより結構、入ってる。 ルフィ、おかわりしてもいいわよ」
「ホントか! やったー!」
「おれもデザート頼むぞ!」
無邪気に喜ぶルフィとチョッパー。
何が起きているのか知っているウソップは大きな溜息。
「よくやるよな……お前ら」
「あら? いいじゃない、悪い奴からちょっと貰ってるだけよ」
「……そうかよ」
悪びれないナミにウソップが呟く。
ゾロは気にする事もないとジョッキに残る酒を飲み干す。
「まぁ……タダだしな。 おれももう1杯飲むか」
「そうよ。 文句言わないの」
ナミが返すとサンジが満面の笑みで戻って来た。
「ナミさ〜ん! 終わらせてきたよ〜!」
「ありがと」
何を終わらせたのだろうとミコトは不思議そうに2人を見た。
『何かあったの?』
「ん? 女の子が暴漢に襲われそうなのを助けたのよ」
『そうなんだ。 じゃあ、その財布はその暴漢のものなの?』
「そうよ」
微笑を浮かべるナミとサンジをミコトは疑いもしない。
『ナミとサンジ君が気付いたおかげで、助かって良かったね』
「そう、レディの1人歩きは危ないからな」
ミコトはサンジにニコリと笑い掛ける。
『サンジ君は騎士だもんね』
「おれはあなたの騎士です……プリンセスをお守りします」
恭しくサンジが胸に手を当てるとミコトはクスクス笑う。
『大げさだな……サンジ君は』
「そうかい? 本気だけど」
『ん……じゃ、よろしくお願いします』
ミコトが丁寧に頭を下げればサンジは口角をあげて笑う。
「お任せあれ」
顔を俯かせたサンジはにんまりと笑う。
気付いたゾロが盛大に顔を顰めたのだった。
(更新 2013.3.25)