My Turn
□ラストチョイス
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人間生きていれば、人生の分かれ道で選択を迫られることは日常茶飯事だ。
彼もまた、人生の中で出会った数々の分岐点で多くの選択をしてきたわけで、それはこれといって特別なことではない。
当たり前だが、彼は自分自身で選んだ道を歩み、今、この男の隣にいる。
男の名は、マイク・ハーディ。
この国で成功した数少ない実業家の一人である。
四十半ばの広い額をもスマートに見せてしまう柔らかいカーブを描いた眉と優しげな目元。
若い頃となんら変わらない甘いマスクで周囲の人間の警戒心を解き、楽しい会話やユーモアのある淀みないトークでその懐に入る。
後は、一突きして喉仏を潰すだけ。
そうやってこの国でのマイク・ハーディの存在は大きくなった。その脂まみれの肥大した権力に刃向かう者はもういない。
曇りも汚れもない巨大なガラスの向こうに広がる小さな街並みを眺め、いつものように爽やかな笑みを浮かべ、宮殿にあるかのような背もたれの長い椅子に腰を下ろしたマイクは、右横に立つ彼を見上げた。
長髪の黒い髪は後ろでくくられており、頭部の両サイドは短く刈られていて彼の整った顔の形が魅力的に見える。南米生まれのはっきりした顔立ちをしているせいなのか、心の動きが表情に表れる。
それを指摘したマイクに向かって大袈裟に笑顔を作って見せたのは、一緒に仕事をし始めた頃だったか。
懐かしい記憶を噛み締めながらゆっくりと長い足を組み、マイクは右手を出した。
今はもう顔色さえ変えない忠実なロボットとなった彼が毎朝交わされる決まり事を行うため、マイクの足元に跪く。
男の美しい手の甲に唇を寄せ、忠誠を誓う。
映画『ゴッドファーザー』の中でマーロン・ブランドが演じていたファミリーのボスに魅せられたというマイクは、暗黙のうちに続けられているこの行為を好んでいた。
「ディノ、何を考えているんだ?」
マイクの右手を軽く握ったまま、尋ねられた彼は顔を上げた。