My Turn
□十年後の私から
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「彼は、年を取った」
そう口にすることで少しでも納得させることができるなら、何度でも言おうとアドバイザーは笑う。
そして、十年後の自分を思い描くことができるか、と彼は私にそう聞いた。
「固定概念と過大評価、彼らは常にこの二つと戦っている」
スーパースターには、固定概念が付きまとう。
現役時代の輝かしい成績や実績、この時代に美しい映像で甦る十年程前のスーパープレイが彼を、今現在の彼と違った見方で評価させることはある。
約十年経った今、彼に同じことができるわけがないはずが、それを期待するファンたちは多い。
これぞ、固定概念である。
そして、スーパースターは、過大評価されることがある。
現役時代に成し遂げた多くの記録や記憶の中に鮮明に残る劇的な名シーンを作った彼は、いかにどんな境遇であってもすべてのことを正しく行えると考える。
約十年経った今、彼にも彼の生活や人生があるというのに、それを期待するファンたちは多い。
これぞ、過大評価である。
「彼は、年を取った。彼が思い描いた十年後に今、いる」
アドバイザーは私の目を見て、さっきした質問を繰り返す。
「十年後の自分を思い描くことができるか」
そして、私の答えを待たずに言葉を続けた。
「彼に十年前のスーパースターの頃のようなプレイはできないし、今の彼にも、もちろん十年前の現役時代の彼にも、ファンたちが望むすべての成功を手に入れることはできない」
「彼は、今も歴史に残る偉大なスーパースターです」
私の反論に、ああ、その通りだ、とアドバイザーは深く頷いた。
「だが、彼にあの頃と同じことを求めるのはおかしい。十年も時が流れ、年を取った彼は現役を退き、今は皆のよく知るあの頃の彼ではないんだ」
同意を求めて、彼は手を右へ左へと振った。
そしてそのまま、もう一度同じ問いを投げかける。十年後の自分を思い描くことができるか、という質問だ。
いや、もう質問ではない。ただの言葉だ。彼は私に聞いているのではない。私に答えさせようとはしていないのだ。
「彼は知っていた」
私の背後にある窓の外を眺めるためかアドバイザーは目を細めた。