My Turn

□黒い飾花(かざりばな)
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 私の父は警察官だった。
 若い頃は車関係の会社に勤めていたが、警察官になりたくて公務員になったのだ。
 父の夢は果たされ、彼は生涯警察官であった。
 私はというと、思春期真っ盛りの反抗的な生活に一々噛み付くうるさい父とよくぶつかり、朝帰りすれば事情聴取のような取り調べをされ、父の同僚にお世話になることもあった。
 その度に、父の名に泥を塗っていたことなど気付きもしなかった。父が出世できなかった理由は私だったのだ。
 だが、父はそんなことを一言も言わず、ただ親として私を叱りつけていた。バイクを乗り回していることも、取っ替え引っ替え女を連れ込むことや、学校に行かずに遊び歩いていたことや、喧嘩に明け暮れていたことに対しても、すべて私の人生を思って怒っていたのだ。

 父は定年をまたずに病に侵され、警察官を辞めた。
 退職して気が緩んだのか、すぐに病状は悪くなり、呆気なくあの世へ行ってしまった。

 警察官時代、父がどういう人間だったのか、私はあまり知らない。
 だが、父が休みの日には管轄内にある私の家にミニパトカーが停まっており、パトロール中の婦警や同僚たちが顔を出していた。
 友人も多かったようで、仲間たちと一緒にあらゆるスポーツを楽しんでいた。

 母は、警察官の妻としていつも黙って父を支え、飲んだくれて帰る時には迎えに行き、夜勤明けを起きて待ち、時には私のために泣き、父の代わりに怒りもした。

 父はあまり家にいなかった。
 警察官なのだから、という理由で私はそれを受け入れていたし、それを幸運とも思っていた。
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