My Turn

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 彼が"どんなこと"になっても好きでいる自信があると彼女は言っていた。
 彼女の言う"どんなこと"の中に何が入っているのか、僕は怖くて聞けなかった。
 でもその自信満々な顔は、"どんなこと"の中に、ありとあらゆる種類の何かが入っていたとしても、揺るぎない決意なのだと僕に感じさせるほど説得力のある表情だった。

 ある人が言う。
「彼、体力が落ちたかもね」

 またある人が言う。
「彼、最近ミスが多い」

 他の誰かが言う。
「彼、調子が悪いみたいだ」

 そのどんな言葉にも彼女は過敏に反応する。

 理由を探し、意味を解いて反論し、囁かれる欠点といえることすら彼の考えのうちであり、彼がこれから成し遂げようとしていることがどんなに困難で、それを目指す彼がどんなに素晴らしいかを口酸っぱく語る。

 彼は天才なのだと彼女は言っていた。
 そして、彼は神に愛されているのだと彼女は言っていた。

 神に愛された天才ならば、成功した人生を大いに楽しんでいるのだろう。
 そう僕が言うと、小さく首を振った。
 生き残るための努力をし続けなくてはならないのだと。
 日々プレッシャーを感じて、自分を追い込んでいるんだと。
 自らが作った重すぎる重荷を背負い、立ち向かっているのだと。

 今の世の中なら、男性だけに関わらず女性も生きるために戦っているだろう。
 仕事上のライバルを蹴散らすため日々目を光らせているだろう。
 人間関係に悩みながらも家庭を守るため毎日必死に生きているだろう。


「それ以上に」
 震える彼女の声が耳に届いた。
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