My Turn
□君の名は
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左足首が痛いと仕事前の朝から口をすぼめて言っていた同僚に「くじいたの?」と相槌を打ったが、顔色が優れない。
「いや、ぶつけたとか挫いた覚えはない。何もしてない」
運動したわけでもない。
何の覚えもないのに、痛いという。
なんか掴まれているような、そんな痛みなのだそうだ。
「ああ、それはあれじゃないの」
思い当たったことがあって苦虫を噛み潰したような顔をして口を開く。
入院したという祖母の見舞いで病院に行くから、ちょっとした浮遊霊のような重い空気を持ってきたんだろう。
「いや、数日行ってない」
同僚は日頃からそういう空気に敏感で、病院やら事故現場やらで体の不調を訴えることが多い。
お盆にはおじいちゃんやおばあちゃんに会えるのだそうだ。
もちろん、ずいぶん昔に亡くなっている。
病院に行ってないのなら、そういうものではないのか。
なら、ぶつけたことを覚えてないだけだろうと軽くあしらい、朝令に立った。
だが、思わぬところから話が戻った。
社長が以前ここで働いていた人が亡くなったという話をしたからだ。
二人同時に視線を合わせ、誰が? と聞く。
二人して首を振り、聞こえなかったと言う。
朝令が終わりデスクに戻る。興味津々に誰なんだろうねと言いながらパソコンのキーボードを打ち始めた。