My Turn

□君を残して死ぬのは嫌だったんだ
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「君を残して死ぬのは嫌だったんだ。だから君が先に死ぬのは私としては大歓迎だ」



 サガミにあまり多くの友人がいないのは、彼が人を寄せ付けない少し曲がった性格だったことと、その生き方だろう。
 彼の生きる世界は、人のそれと少し次元が違うと光勝(こうしょう)は思う。
 生きるということを平たく考え、死ぬということを自分の一部として受け入れていた。

 死にたくない、生きたい。
 人として当たり前にある願望をサガミは持っていなかった。
 別にかわいそうな生い立ちだったわけでも、目立たつほど恵まれていたわけでもなかった。
 彼のしていた仕事は、特殊なものでも特別なものでもなくごく普通の仕事だった。
 部屋の中でパソコン一つでできる仕事だったせいか、人との交流は極端に少なかったかもしれない。
 だが、彼は部屋に引きこもって外に出なかったわけでもなく、好きな車を運転して好きな時に行きたい場所へ自由に出掛けていた。


 彼はしばしば「死にたがり」と言われる。
 至って本人にはそのような自覚はないようだが、はたから見ると死にたがっているように見えるのだ。

 人が危険だとか馬鹿だと思うことを進んで行う。線路で寝てみたり、高速道路を横断したり、車から飛び降りたりするわけではない。

 何か理由があってその命を粗末に扱うのだが、それはいつだって常軌を逸脱していると言える。
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