Sour1
□Burning Blood9
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ヒロの口から聞きたかった。
もっと早く打ち明けてほしかった。
ヨシキの想いをつなげようとヒロが必死になっていることに、ちゃんと気づいてやればよかった。
ヤナセが逃げずにヨシキの両親の元へ行っていれば、ヒロが罪を犯すことなどなかった。
すべては、ヤナセの責任だった。
「ヨシキが死んだのは、オレのせいです」
父親が真っ赤に充血した目をヤナセに向けていた。
大きく見開いたその瞳から刺す、激しい憎しみを込めたその視線をヤナセは真っ正面から受け止めていた。
「あの夜、ヨシキを一人で帰さなければ、オレがそばにいてやれば、ヨシキは助かったはずだ。オレが、チームに誘わなければ、単車なんて教えなければ、ヨシキは死ななかった。だから、オレのせいです」
まくし立てるように言って、ヤナセは足を折った。
地面にひざを下ろし、土下座して頭を垂れる。
「すみませんでした。ヨシキが死んだのはオレのせいです。それにバイクのマフラーのことも、オレの責任です」
両ひざに手を置き、小石の撒かれた玄関先でヤナセは額を地面に擦り合わせる。
「すみませんでした!」
ヤナセは目をつぶっていた。
土下座なんて今まで生きてきてした試しがない。ヨシキの父親にわかるよう謝罪を示す方法など他に知るよしもない。
ヨシキが死んだのはオレのせいだ。
そんなことは死んだと知ったその瞬間から百も承知だった。
ヤナセは逃げていた。ヨシキの死の責任を背負うのが怖くて、逃げていた。
「話はそれだけか」
抑揚のない言葉が頭を下げたままのヤナセの耳に入った。
答えを待つ気など始めからなかったのだろう。すぐに扉が閉まる音が夜の空に響いて広がった。