Sour1
□あなたに愛を、僕に鎖を21
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同じテーブルに顔を突き合わせた三人の男のうち、一人は笑みを浮かべ、真ん中に座るもう一人は顔をしかめ、最後の一人は頬杖をついて口を尖らせていた。
話の内容は一つ、中央に座る佐野のことである。
「想い人ってどういう意味?」
「好きな人ってことでしょ」
「教官、この人のこと好きなの? 男じゃん」
「君も男でしょ」
チョコと住友は佐野を挟み、棘のある言葉を交わしている。
あえて会話に入らない佐野はグラスを口元から離さず、眉間にできたしわを伸ばすこともしなかった。
二人は同類である。だから、気が合うはずだった。
佐野はそれを期待して二人を引き会わせたのだが、見当違いだったようだ。信頼するスタッフのチョコと、悩みの源であるパートナーの住友は全くそりが合わない。
「あんたみたいな男、教官が好きになるわけないじゃん」
住友が鋭い剣で切り付けると、
「君みたいなガキじゃ、教官を満たしてあげられないね」
チョコが鋭利な矢を投げる。
火に油を注ぐような言葉を口にするチョコは、いつも佐野に助言をしてくれる穏やかな姿とは打って変わって別人のようだった。
初めから喧嘩腰の住友は、チョコの注ぐ油に面白いほど炎を滾らせ、その火はこの場を焼き尽くすかのようだった。
ドン!
大きな音を立てて、佐野が空のグラスをテーブルに置いた。
「いい加減にしてくれ。スミ、細かいことに一々突っかかるな。チョコさん、子供相手に大人気ないよ」
佐野の静かな怒りは燃え上がった火を一瞬で消し去る。
怒られた二人の男は、縮めた肩を揺らしながら言い訳を口にした。
「ごめんね、教官。久しぶりだから嬉しかったんだけどさ」
「だって、この人俺に喧嘩売ってるし。マジむかつく」
消火したと思った火がまたも燃え始めそうになり、気が長いわけではない佐野の大きな声が店内に響き渡った。
「チョコさん! ビールおかわり!」