Sour1

□あなたに愛を、僕に鎖を17
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「家まで送るから、車に乗れ」

「やだ。 帰らないし、やめない!」
 背中越しの焦りの混じる声を無視し、佐野は運転席へと車を回り込む。

「じゃ、勝手にしろ」
 大きな音を立てて車のドアを閉めると、慌てた住友が、「待ってよ」と言いながら後部座席に乗り込んできた。


 三人の乗った車内は静かだった。
 佐野の愛車はエンジンの音すら立てず、乱暴な運転にも怯まず、スムーズな走りを見せていた。
 まだ夕方で車の数はそう多くない。ブレーキを踏む機会のない道のりは、住友の自宅まであっという間のことだった。

 後部座席で窓の外を睨む住友は、理解できないことを必死で理解しようともがいていた。
 佐野が珠理を抱く理由は、何か。
 佐野と住友の関係とは、何か。
 パートナーとは、何なのか。

 住友の家の前で滑らかに停止した車はハザードランプを点灯させて、道の端にある小さな花をつけた植木の横に並んだ。
 整理されていない思考の住友に、佐野は冷たく告げる。

「降りろ」
 バックミラーに映る住友の首が左右に揺れる。

「降りろ、スミ。無理に続ける必要はない、そう言ったはずだ」
 前方に向けた視線をそのままに口を開く。顔を見る必要はない。

「相性が合わなかったと、そういうことだ。互いに求めているものが違うんだ。それはしょうがないことだよ。相性が悪い相手とパートナーでいることはない。スミも自由に他の誰かを探せばいい」

「俺と教官、相性悪いの?」
 冷静を取り戻したような住友のいつもの声色に、佐野はゆっくり答えた。

「そうかもしれないな」
 二人の関係の終わりがすぐ目の前にあるような気がして、佐野は渇いた唇を舐めた。

 初めて出会った日や初めてホテルに行った日が懐かしく思い出された。小さな喧嘩をして泣いて電話をかけてきたことも、緊張しすぎて一人イッてしまったことも、なかなか経験できないことだった。
 こんな子供をパートナーにしたことがそもそも間違いだったのかもしれないと、ほんの小さく息をつく。
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