Sour1

□あなたに愛を、僕に鎖を16
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 珠理に救われた佐野は頻繁に彼女に会うようになっていた。以前からも三ヶ月に一度程度はプレイのために二人ホテルへと足を運んでいたが、現状に不満を感じる今は、それが月に一度でも、二週間に一度であっても、すぐに連絡を取り、彼女との行為に浸った。
 佐野は、彼女ともパートナー関係を結んでいるといえるが、それは互いの趣味が合ったというだけで、調教しているわけではない。奴隷と呼び、命令し、スパンキングもするが、それはプレイの種類の話で、珠理が佐野を主人としている節はない。

 住友との関係とは、根本的に異なっているのだ。

 だがそれを、住友が理解できるはずもない。
 佐野が自分以外の人間と関係を持っているなど、想像もしなかっただろう。
 自分だけが佐野の奴隷であり、尻を撫ぜる手も激しく叩く棒もフェラチオも、すべて住友だけの特権だと思っていた。

 住友がそれに気づいたのは、マゾヒストである珠理と顔を合わせ、会話した時だった。
 もちろん、佐野は珠理の存在を話したりはしない。愛車に乗せて、住友のアルバイト先に行くようなこともしない。二人を引き合わせ、互いに自己紹介をさせたわけでもない。


 大学への通学に使用している駅のロータリーで、ふと佐野の愛車と同じ外国車を見かけた住友は、佐野の車か確認するために近づいて行って中の様子を覗いた。
 車内には住友の存在に全く気づいていない佐野が、一人乗っていた。
 驚かせようと窓を叩くべく手を上げた時、住友の肩が叩かれた。
 振り返ると、そこには髪の長い華奢な女がスーツ姿で立っていた。

 佐野との待ち合わせに訪れた珠理である。
 それは、本当に偶然の出来事だった。

「もしかして、教習所の子?」
 ヒールが高いせいか住友より幾分高い位置に彼女の目があった。くっきりとしたアイライン、真っ黒いまつ毛がカールしており、はっきりとした顔立ちをした珠理の頬はチークによってピンク色に色づいている。

「思ったよりヤンチャな感じね、可愛い顔してるし。私、珠理っていうのよ。あなたとは同類」
 動き続ける口紅の塗られた唇の艶がひどく妖しく感じ、住友は思わず後退りした。運転席に乗っているはずの佐野へ視線で助けを求める。
 だが、佐野は二人に気づいていないようで顔を出さない。
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