Sour1
□あなたに愛を、僕に鎖を15
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住友の調教はとても単調だった。
叩けば、尻を隠す。
手をどければ、逃げる。
追えば、泣き出す。
その繰り返しである。
いまだ痛みに快感を得ることができない住友は、毎回目を赤くして帰路についた。
佐野は少しずつ進めるつもりだった。
主人に対する礼儀を教え、謝罪や要求の仕方を教え、徐々に奴隷としてのプレイを増やしていく。
女が相手ならば佐野も手順通りに進められたかもしれない。与える飴も種類があるし、女の欲求は心得ている。
だが、住友は男で、言うほどマゾヒストではない。いや、マゾヒストなのだろうが、まだ開拓されていないのだ。
フェラチオや自慰行為をさせても、そういつも興奮するわけではない。
プレイには種類が必要なのだ。道具と技が必要なのだ。
だが、二人の間にはまだ種類はなく、道具も技もなかった。
「お尻見せて」
バスルームで住友が一人、裸で立っていた。
くるりと体を反転させ、尻を佐野に見せる。赤いすじが何本か残っていた。今日耐えられた回数分の赤いライン。
佐野が腕を伸ばし、指先で少し撫ぜると、住友は体を強張らせた。
小さく息をつき、佐野は一向に増えないラインを視界から消す。
「十回は我慢できたかな?」
「いや」
両方の手の平を開き、指を折っていく。三本の指が折れた佐野の手を見て、住友が眉をしかめた。
「七回?」
ため息で答える佐野に住友は声を張る。
「フェラ、させてください。もっと上手にできるようになるから! 俺にフェラさせてください」
「それは褒美か?」
「教官に気持ち良くなってもらいたい」
「俺は、いい」
首を左右に振る佐野に、「でも、」と口にして住友は続きの言葉を見失った。
立ち上がってバスルームから隣の部屋へ煙草を取りに歩く佐野の背中に、焦ったような声が追いかけた。
「煙草の本数、増えてる気がする」
足を止め、手に持ったライターに視線を落とす。
「体、大事にしてほしい」
背後で聞こえる住友の声は弱々しい。
何か感じているのだろう。佐野の落胆を肌で感じているのかもしれない。