Sour1

□あなたに愛を、僕に鎖を13
1ページ/4ページ


 奴隷は奴隷らしく。

 以前、焼肉屋で聞いた佐野の台詞が住友の頭の中を巡る。
 ご主人様である佐野はすぐそこにいて、住友の姿を見ている。
 言われたように裸を晒して足を折って座り、股間から反り立つペニスが首を伸ばし、欲望を吐き出したいと訴える。

「喘ぎながら、イけ」

 ペニスを握る。
 自分の右手のはずが、全く別物に感じた。

「ん、はぁ」

 上下に扱く。
 自分の指のはずが、誰かの、佐野の指に感じる。

「はぁんっ、あ」
 一気に頂きまでの急上昇に住友の体はついていかない。右手を動かしたまま、左手をガラスの壁につき、支える。
 顔を上げると、自分の喘ぐ姿を直視している佐野と目が合った。
 耐えることから解放され、快感の渦に落ちたと感じた時には、もう射精は始まっていた。

「あぁ、教官んぁ、あぁ、はぁあっ!」
 溜まった欲望を、耐えた分だけ溜め続けた欲を、吐き出す。勢いよく飛び出す白濁とした液はガラスに散る。精液はドクドクといつまでも先端から溢れ出た。

「あぁ、はぁ、はぁ、ん」
 弱まる勢いに合わせて肩で息をする住友は、斑(まだら)になったガラスの向こうにいる佐野に目を向けた。
 上気し、荒い呼吸をしている住友と反対に、佐野は涼しげで冷めているようだった。腕を組み、無表情のまま住友を見る。

 実際は、組み合わせた腕の中で握った手の平は汗で湿り、閉じた口内で歯を食いしばり、平静を装うのに骨を折っていた佐野だったのだが、住友にはわからない。
 同性の達するシーンなどAVでも見られるし、クラブでも見かけることはある。
 これといって珍しいものではない。
 だが、名を呼ばれながら喘ぐ男はなかなかお目にかかれない。
 しかも、十代の子供の口から「教官」と喘がれるとは。

「初めて他人の見るわけじゃないけど、若いっていいな」

「なにそれ」
 やっと笑顔を見せた佐野にほっとしたように住友は笑いかける。恥ずかしさに口を尖らせ、シャワーで汚れたガラスを流そうとした。

「いや、流さなくていいよ」
 シャワーを持つ手を止め、ガラスの壁の向こうで立ち上がった佐野を見上げる。

「そのままでいい。バスローブを着て、こっちにおいでよ。乾杯しよう」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ