Sour1
□あなたに愛を、僕に鎖を11
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「自分でするな。したくなったら電話か、メールをしろ」
主従関係を結んで、初めての命令は自慰行為の禁止だった。
住友は十代。まだ性欲も盛んな若者である。食欲旺盛な時期に昼食を抜けと言っているようなものだった。だが、住友は素直に頷いた。
それは、許可が得られればできることで、佐野はすぐにでも行為を許してくれると思っていたからだった。
実際のところは、そうではない。
【したい】
【ダメだ】
【我慢できない。今したい】
【ダメだ。俺の許可なく触るな】
繰り返し許可を取るためのメールを送っても、決して佐野から許しは出なかった。
溜まっていく精液と共に不満も募る。
したい時にしていた今までとはあまりにも違い、自分の意思で決められない事に住友の苛立ちも積もる。
一度、欲求のまま佐野に与えられた快感を忘れられるわけもない。
あの時の車内の興奮を思い出す度、住友のペニスは熱(い)きり立った。
したい。したくて溜まらない。
気持ち良くなりたい。一刻も早く、気持ちよくなりたい。
【ダメだ。我慢しろ】
どんなに訴えても、当然のように返ってくる拒否の文字に、住友は怒りを覚える。許可しない佐野に対しても、耐えなければならない自分の立場に対しても、それでも反応する自分のモノに対しても。
住友の限界は、短かった。
命じられてから三日目のアルバイト帰り、住友は教習所に足を運んだ。
あと卒業試験だけを待つ身となったため、教習の予定はない。試験は二日後、予約も取り終えていた。
駐輪場に自転車を停める。
見慣れた教習所内に視線を巡らせて、佐野の姿を探して歩く。数台の教習車が校内を走っていたが、どの車にも佐野は乗っていなかった。
教習車を一目見ただけで、あの熱い気持ちが蘇る。手袋をした両手を握りしめ、盛り上がりそうになる興奮を抑えた。
だが、ドクドクと波打つのは心臓だけで、住友の股間は反応しない。
ダウンジャケットの首元を立てせ、凍りそうな耳を擦る。
思った通り、喫煙所に佐野はいた。
寒そうに肩を縮め、煙草を吸っている。
「――教官」