Sour1
□あなたに愛を、僕に鎖を10
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体全体が熱い。
心臓はあるべき場所になく、体中のいたる所で大音量を響かせて脈を打っていた。
なぜ、何もされてもいない状態で、何もしていない状態で、こんなにも恍惚に似た快感が住友の体を襲うのか。
その理由がわからなかった。
わからないことが、余計に拍車をかけて興奮を押し上げる。
何かを考える思考すら奪われていて、隣に座る佐野の存在だけを感じる。
住友を呼ぶその声だけが聞こえる。
「手を離すな。口を動かせ」
「ちょっと待って」
「まだ何もしてないだろ。こっちを向け。言えよ、今何を考えてるか。何を想像してるか。どうして興奮してるのか」
俺に言えよ、と佐野は顔を近づける。
「目をつぶるな」
ハンドルから手を離せば、怒られ、目の前の佐野の顔を見られずに目をつぶれば、怒られ、住友はどうしようもなく八方塞がりに感じた。逃げられない。
この男からは、逃げられない。
「さわりたい」
「違うだろ」
勇気を持って言葉を発したというのに、佐野に否定され、住友は唇を噛んだ。
逃げ道はない。
住友は諦めたように渇いた口内に思い切り酸素を入れた。
「しゃぶりたい」
それは、はち切れんばかりに膨らんだ欲望が一気に噴き出したようだった。
「教官の手で叩かれたい。裸にして縛られて、踏みつけられたい。無理矢理押さえつけられて、乱暴に命令されて、そんで、しゃぶりたい! 手と唇と舌で、教官を感じたい。俺の口の中でイってほしい。何回も何回もイってほしい」
ギリギリの所で耐えていた住友のプライドは、あっけなく散った。