Sour1
□あなたに愛を、僕に鎖を7
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携帯の画面に表示された文字を長々と眺めた住友は、部屋のシングルベッドの上で飛び跳ねる思いだった。
目はだらしなく下がり、口角は割けるほど上がり、意識せずに笑いが込み上げ、じっとしていることができずに足をばたばたと動かす。
【もう決まったのか! すごいな。明日飯でも行こう】
【そうだな、頑張れよ! 明日は家に迎えに行くから。仕事終わったら連絡するよ】
【たぶん9時過ぎくらいだと思う。遅い飯だけど、何食べたい?】
【焼肉か。行きつけの店に連れて行くよ。じゃ、明日】
「おやすみなさい」
一文字ずつ口に出しながら住友はスマートフォンの画面に指を滑らせた。
佐野と、お疲れ様以外の挨拶を交わしたことはない。住友は佐野との初めてのメールのやり取りに浮き足立っていた。受信ボックスにあるメールを繰り返し目で追う。
緊張しながら電話したガソリンスタンド、久しぶりに書いた面倒な履歴書、引きつった笑顔で受けた面接。
どれもこれも佐野のため。
佐野との約束を守るため。
こうやってメールを送るためだった。
そして、佐野の声を乗せたメールをもらうためだったのだ。
行きつけの焼肉屋に連れて行ってくれるという。
その先に自分の求めるものがあるかはわからないが、住友は少しも不安ではなかった。佐野との距離がほんの少しでも縮まっていることにただ喜んでいた。
佐野が何を考えているかなど、住友には想像できようもない。
住友はまだ若く、未熟で、世の中を知らない。佐野が考えていることも、佐野が求めることも、佐野が生きている世界も、何も知らないのだ。
佐野が見返りもなく、飴を与えることなどない。サディストである男が、蜜より甘い言葉を吐く時はその先に痛みと苦しみがあるということを、住友は知らない。
住友が自室で喜びに浸っている頃、佐野はというと、クイーンサイズの大きなベッドの上でパートナーである珠理の湯上りの体を弄び、感じる飢えを満たすため野獣のように貪り、女が喘ぐその声と潤った膣に酔いしれていた。
赤く腫れた尻を掴み、乱暴に引き寄せる。
胸に縋りつく珠理の体を欲望のまま、好きなだけ欲する。猛るペニスは疲れを知らず、足掻くことも苦悶することもない。
「次に会うまでに会社の部下に犯されろ。普段えらそうにしているお前からセックスを懇願しろ。跪いてフェラチオがしたいと言え。わかったな? できなかったらキツい仕置きだ」
快感に思考力を奪われた女は、佐野の難題に喘ぎ声で答える。
楽しみが増えたと笑う男の顔は、教習所の指導員とは思えない卑猥な顔つきだった。
一層速さを増した動きに珠理は悲鳴を上げた。
佐野は己の欲求を満足させるためだけにパートナーを飼う。
その関係に愛情など必要ない。