Sour1
□あなたに愛を、僕に鎖を3
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喫煙所のベンチに座って煙草の煙をくもらせ、狭い教習所内の限られた区間でうろうろとする数台の車を眺めながら、佐野は眉をひそめた。
呆けた馬鹿が行く当てもなくうろついているようで、尻でも蹴れば少しはマシかもしれないと、一人鼻で笑う。
踏切手前で立ち往生している車の窓から見える教習生に見覚えがあり、佐野は目を覆った。
「だっせ、エンストしてるし」
聞き慣れた声に顔を上げると、そこには住友がいた。
体の正面を佐野の座るベンチへ向けて立ち、顔だけを止まってしまった車へ、佐野が見ていた教習車へと向け、面白くなさげに口を尖らせている。
「君も最初はよくエンストしただろ」
「最初だけだし」
「あの子はまだ初期段階だから、しょうがない」
住友の横顔を眺めながら、佐野は少し笑った。
運転席に座る自分と同じ年頃の教習生を少しの間観察して、住友は「ああいう子が好きなの?」と口にした。
視線を変えはしない。
ただ睨みつけるように教習車を見ている。
やっとのことで通過できた踏み切りの先の十字路を、ランプをいくつか頭にのせた車がのろのろと走っている。実技を始めたばかりの教習では、エンストなど珍しいものではない。
運転席で苦戦している教習生は、まだ二度目だ。初めての実技教習で佐野は彼女の担当教官だった。
「ああいう子がいいの?」
何を根拠に住友がそういう考えに至ったのか、佐野には理解ができなかった。だが、住友が佐野の好みに異様なほど興味を抱いているのは確かだった。
からかい半分に佐野は口を曲げた。