Sour1
□あなたに愛を、僕に鎖を1
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「やめろよ! いてぇよ」
腫れ上がった皮膚が赤黒く色を変えていた。彼は必死に声を張るが男の耳には入っていないようだ。彼を打ち付ける妖しく光るしなる黒い棒の唸る音が部屋全体に響く。
首を振りながら拒否の声を上げる彼は何度も同じ台詞を吐く。
「やめろよ! いてぇって! もうやめろよ」
四肢は満足に動かない。彼の腕は背中に回され縄によって固く縛られている。太腿と膝、足首も腕同様、身動き一つ取れないようきつく縄が締め付けられ彼の体は自分の意思の届かないところにあった。
抗うことのできない自分の状況に言葉でしか抵抗できない。
「やだ、やだ! もうやだ! やめろ!」
重心は床につく顔にあり、土下座のような格好をした彼は痛みを発する尻を下げようと正座の形に足を曲げる。だが、雁字搦めに縛られた下半身に縄が食い込み、痛みが全身を覆う。
掲げられた尻は、初め棒の跡がくっきりと残っていたが同じ位置に振るわれるせいで線状ではなく大きな丸い痣になっていった。
彼は裸である。
鞭打つ男はスーツ姿のまま、ただ目の前の彼の尻に黒い棒を打ち下ろしている。
「もうやだ! もうやめろよ!」
「言葉使いがなってない」
男は無表情を顔に貼り付けて淡々と言葉を口にする。
「やめてください。もう無理です」
その瞳には溢れんばかりに涙が溜まり、彼の感じる痛みを表していた。その言葉も痛みを逃れるため命ぜられるまま懇願の言葉に変わった。
「まだ半分だ。仕置きはまだ半分残ってる」
彼の嘆願を無視し、男は棒を持つ腕を上げる。
その動作を目に捉え、彼は悲痛に歪んだ顔でまぶたを強くつぶった。
バチン!
「うあっ」
漏れる呻きを耳にして男の口角が上がる。棒を握る手に油が溜まっているようだった。己の興奮状態を表している汗だというのに、手が滑ることが我慢ならない。男は自分の不甲斐なさに眉間を寄せた。
彼の体が震えている。痣のできた尻を突き上げ、肉に縄が食い込む痛みに耐えている。
気を取り直し男は指に力を込める。
バチン!
「ああっ」
息の上がった彼の口は男を呼ぶ。
「教官! 教官、お願いします。もうやめてください。無理です。もう無理です」