Sour1

□深愛(しんあい)U
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 マリン・チェダは女を抱いたことがないわけではなかったが、本当の愛を持って行為をしたことはなかった。
 イヴと一緒にいる時間は多かったが、二人同じベッドに横になることはなかった。彼女に対して愛情を感じていたとしても彼は行為自体を避けているようだった。

 だが、今日のマリン・チェダはいつもとは違った。


 二人は、ククシュの店を出てから一言も口を開かなかった。
 握り合った手は固く結ばれていたが、彼は真っ直ぐ前だけを見て歩いていた。急ぐこともなく、小走りになることもなく、淡々と歩を進める彼の横をイヴは期待と不安を膨らませながら歩いた。

 イヴは、彼を好きだと公言していたし、彼自身にも伝えていた。
 仕事を手伝い、時間があれば会い、共に食事し、互いのことを語り合った。
 町の人は、「結婚しろ」とか、「将来を約束した仲」だとか色々彼女に言うが、本当のところ、彼らの間には何の進展もなかったのだ。
 体を寄せて抱き合っても、頬に口づけをしても、それは挨拶の一つであり、二人の仲が深まることはなかった。

 イヴはそれをもどかしく、歯痒いと感じていたが、マリン・チェダに拒絶されることを恐れて自分からは行動に移さなかった。
 もしかしたら、彼は私を好きではないのかもしれない。
 もしかしたら、ただの友人としての関係に留めているのかもしれない。

 彼からしてみれば、イヴは恩人である。
 恩人に恋心を持つことを彼は、彼自身に禁じているのかもしれない。恩を重んじる彼のことだ。そう易々と自分自身の欲求に素直にはならないだろう。
 彼女の生活の一部となった焦燥感は、日に日に増幅していく一方だった。
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