Cocktail

□警部:手塚
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「失礼します」
 顔を上げると数週間前に警視庁から飛ばされて来た大木がそこに立っていた。チラといちべつして、パソコンの報告書のページを探す為にマウスを操り始める。

「警部、先日のガサ状の件ですが」
 大木の話の内容など少しも頭に入らなかった。
 マウスの中心にあるホイールボタンを撫ぜる人指しゆびの感覚がおぼつかないのだ。
 視界には、脳裏に思い描く彼女の姿が形となって表れていた。
 眉間にしわを寄せて口をつぼませる顔がひどく妖しい。
 弾力のある彼女のクリトリスをゆっくりと上下に擦っていく。
 少しずつ早く動かしていくと赤い唇を噛む。
 早く。
 もっと早く。
 その口を大きく開けて声を聞かせろ。

 吐息のような小さな溜息を吐くと、彼女が言った。

「まだ時期尚早とのことです」

 細かく上下していたパソコンの画面から目を上げると大木が怪訝そうな表情で私を見ていた。

「誰が何だって?」
 額を掻いて彼女の像をしぶしぶ消す。
 彼女が言ったのならおもしろい。時期尚早だな確かに。

「署長が任意同行を掛けろと」
 使えない男だ。
 本庁も放ってよこしたのが納得できる。
 さぞかしあっちの方も使えないのだろう。女房が可哀想になる。

「ああ、わかった。私から署長に話す。お前はもういい」
 姿を消せとばかりに手を揺らすと大木は一礼して部屋を出て行った。

 彼女の姿はどこにもなかった。
 熱くなった股間だけはそのまま収まる事を知らない。
 呼び戻すのは簡単だが、楽しみは後に取っておこう。
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