Cocktail

□ NO LIMIT.(4)
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 今夜だけだ。

 彼が僕の耳元でささやいた。


 今夜だけ、君は僕のもの。僕は君のもの。それでいい。
 彼が僕のためにゲイになれるのなら、同じように彼を愛している僕もなれるはず。彼のすべてを欲していいのなら、僕だって欲しい。

 明日になれば、僕の家族がここにやって来る。
 彼と僕の二人きりの生活は終わりを迎える。今夜は最後の夜、彼との最後の夜。


 彼は部屋の電気を消し、小さなランプのスイッチをつけた。
 淡い光が彼と僕を照らしていて、上着を脱ぎ去った彼の体がふわふわと揺れているようだった。
 彼と僕は、とても真剣だった。どうすればいいのかよくわからないまま、僕も上着を脱ぎ、ズボンを下ろす。ソファに座り、オレンジ色に輝く彼の体を眺める。
 監督といえど、現役選手たちと一緒になって日々トレーニングをしている彼の体は、とても引き締まっていて、美しい。

 座っている僕の上にひざを曲げてゆっくり跨ると、彼は首を傾げた。

「重いかい?」

 僕が足を少しずらせば、ちょうどいい重さになる。彼の全体重を支える必要はない。
 視線が近い。顔の高さも少し見上げるくらいでいい。僕の好きな彼のあごがすぐそこにある。
 首を横に振ってから僕は、彼の胸に口づけた。

 それは、感じたことのない幸福感だった。
 愛して止まない彼の胸に、愛おしい彼の胸に唇を押し付けて密着し、肌と肌を合わせて心臓の音を聴く。少し早い鼓動が、耳に心地良い。

「緊張してる?」

「すごいプレッシャーさ。ヨーロッパリーグの決勝なんて比にならないね」

 彼が優しく笑うから、僕も笑う。

「キスしたい」

 僕がねだるように言うと、彼の唇が落ちてくる。
 優しいキスだった。貪るようなそんなものじゃなくて、彼はとても丁寧に僕をエスコートしてくれた。
 まるで壊れ物でも触れるように、そっと。繰り返される愛撫も、とてもソフトだ。

 だからなのか、僕のモノはやたら反応して彼の股間を持ち上げる。
 恥ずかしげに顔をしかめると彼がいたずらっぽく微笑んだ。下着の中から僕のモノを出し、彼も自分のモノを掴んで出して、並べた僕らのモノを一緒に握りしめた。

 彼は顔色を変えない。いつもの彼のまま。
 僕は恥じらいと高揚感に体を強張らせてしまうけれど、彼は僕を抱きしめて、頬や唇にキスをしながら、二つのモノを扱く。

「はぁ、クレウス。や、ダメだよ、そんなに、ん」

 彼のたくましい腕にすがり、僕は快感に飲まれていく。
 激しく動く彼の手は濡れていやらしい音を発していた。でも僕はそんなこと気にしていられない。
 彼のモノが固く反り立っていて、ドクドクと波打つ。そうやって僕に刺激を与えるから、僕は必死に耐えるだけ。

「ん。ん、ま、待って、」

「ロジル、君が欲しいよ」

 吐息のような彼の声に僕は達しそうになる。

 なんて艶やかな声なんだ。僕の心を鷲掴みする彼の声、彼の匂い、彼の体と手。
 決して離さないで。僕を逃がしたりしないで。

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