My Turn

□NO WORDS
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 ◆

 手にしたトロフィーや目標を達成できたことや結果を出したことを、彼と共に喜びたい、と感じたことはある。
 手を叩き合って、抱き合って、互いの肩を寄せ合って一緒に喜びたいと思わないわけはないさ。いつだって彼と喜びを分かち合いたい。
 でも、俺と彼には互いがいるべき場所があって、それも互いに大事な場所なんだ。
 だから、俺が喜んでいる時、彼が喜んでいる時、遠く離れた場所で祝福する。俺が笑っている時、彼が笑っている時、それは素晴らしく幸せな瞬間なんだよ。俺にとっても、彼にとっても。

 彼が歓喜に震えて泣いていたら、と想像するんだ。
 俺の性格が捻くれていると笑うなよ。性格が悪いだなんて一度だって言われたことはないさ。
 わかるか? 彼のあの頬に流れる一筋の涙が、眩しいくらいに美しいんだ。溢れる涙を堪えようと彼は必死に耐える。だが、そんな努力は無駄だ。
 彼は一人で戦い、たった一人で困難に立ち向かい、努力し続け、誰にでもある自分の弱さに打ち勝ってその栄光を手にする。
 感極まって涙を見せたっていいじゃないか。俺はいつだって彼の嬉し泣きする顔を見たいね。

 でも、俺の願いはあまり叶わない。彼がタオルで顔を覆ってしまうからね。


 ◇

 彼から喜びを爆発させたようなそんな嬉しい報告を直接もらえたら、と考えたことはあるよ。
 もしそんなことがあれば、僕はどんな風に答えるだろう。「おめでとう! 素晴らしいよ!」だとか、どこにでもあるような祝福の言葉を口にするんだろうか。
 でも、僕からそれを求めることはしないよ。彼には祝福してくれるたくさんの人が周りにいるからね。

 彼は決して一人で戦ったりしない。いつもチームが、仲間が、彼のそばにいて共に苦しみ、共に努力し、共に立ち向かって勝利を手にして共に喜び、共に笑い、共に紙吹雪が舞う会場を走り回るんだ。
 素敵なシーンだよね。
 手と手を取り合って、肩を抱いて大声を張り上げながら喜びをジャンプで表現する。歌を歌い、フラッグを振り、代わり代わりトロフィーにキスをするんだ。
 想像するだけでも顔がにやけてしまうよ。幸せそうな彼の顔が見られるだけで、多くの笑顔に包まれた誇らしげな彼を見るだけで、僕は十分さ。
 僕から彼に、いかに素晴らしいことを成し遂げたかなんて説明する必要なんてないんだよ。
 だって彼は知ってる。それが隣にいる仲間たちや支えてくれた家族や応援してくれたサポーターたちの力によるモノだということを。彼は彼をサポートしてくれたすべての人と喜びたいんだ。その喜ぶ姿が見たいんだよ。

 だから僕は言わないし、求めない。僕たちは、それでいいんだ。
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