Sour1
□あなたに愛を、僕に鎖を12
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佐野が、住友に真新しい免許証を自慢げに見せられたのは、家に迎えに行った車の中でだった。
あの電話の後、落ち着きを取り戻した住友は無事に試験を受け、見事合格したという。
合格の報告は、泣いて電話をしてきた時と打って変わって明るい、いつもの住友からの電話だった。
こんな風にころころと態度が変化するのは、若さなのか性格なのか、佐野にはまだわからなかったが、関係が元に戻ったのであれば問題はない。
喧嘩といえるものだったのか定かではないが、お互い避ける毎日は苦痛だったのだ。
三月の終わり。
知り合って二ヶ月半で佐野と住友は関係を築き、より関係を深めるためにホテルへと向かうこととなった。
それは試験合格の祝いを兼ねてのことなのだが、否応にも熱が体を駆け巡り、車内にいる住友の興奮度は増していく。
気を散らすために、会話に集中しようと住友は口を動かしていた。
「ホテルって、ラブホ?」
「ああ。でも、ただのラブホじゃないよ。きっとスミも気に入る。ちょっと遠いけどね」
男二人でホテルに行くのは初めてのことである。
それは佐野も住友も同じことだったが、運転席の佐野に硬さがあるようには見えない。火照ったままの住友は、会話の内容を間違えた、と大袈裟に深呼吸をした。
ラブホテルに佐野と二人。
想像するだけで、背筋がざわめく。
「遠いんだ。でも俺、ドライブも好き。教官の運転、好きだし。全然平気」
助手席に座る住友は、作った笑顔を佐野に向ける。
車線変更をするために左のミラーを確認し、視界を前へと戻す際に捉えた隣の引きつった顔に佐野は笑った。
「スミ、緊張してるんだろ」
「ちげぇし! 緊張してるわけじゃない。ヤバいっていうか、なんていうか」
「なんていうか、何?」
太腿を揺らして顔をしかめ、住友は小さな声でつぶやいた。
「もう、ヤバいんだ」
「もうって、早いよ。 あと三十分我慢しろよ。高速に乗って、飛ばせばすぐだ」
真っ赤な顔をしてうつむいた住友に声をかけ、佐野はアクセルを踏む。
若さとは罪だ。
佐野にもこんな時期があった。
初めてSMプレイに足を踏み入れた懐かしい思い出を脳裏に浮かべながら、上がった口の端を戻した。