My Turn

□Non-Communications
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「その子はね、学校が嫌になったんだって。友達が嫌いなんだって」

 自分には親友と呼べる子がいないと泣いていた登校拒否の女の子。

 自分の気持ちを伝えないのだから、親友などできはしない。
 恐れを抱く相手に心を開くことはできない。

 女の子は、愛犬に話を聞いてもらっているという。
 女は持っていた携帯灰皿に煙草を押し付けると、「怖いよね」と同意して呟いた。

 相手が何を考えているかわからないから、怖いのだ。
 でも、伝えないと何も始まらない。ボールを投げなければ、キャッチボールはできない。


「会社をクビになったのは、自分のせいだって言うの。成績が悪いからだって」

 契約が取れずに悩み、己の性格を呪い、自分を受け入れなくなった男性。

 自分の抱える性質を理解せずに多くを求めるのは間違いだろう。
 自分が、自分を受け入れていないのだから、他人に受け入れられるわけがない。

 男性は、飼っているピラニアに憧れているという。
 二本目の煙草に火をつけて女は、つぼめた口から細い煙を吐いた。

 人には向き不向きがある。できないことも世の中にはあるのだ。見栄を張って尻を叩き続けても結果が出ないこともざらにある。
 素の自分を受け入れてあげられるのは、自分だけだ。真の自分を愛してやれるのは、自分だけだ。
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